JR東日本の競合は、もはや「鉄道会社」だけではない
ここまで、JR東日本の戦略を読み解いてきました。同社は今後、単なる鉄道会社ではなく、移動を起点に生活接点を広げる企業へと進化しようとしています。
そうなると気になるのが、今後の競合はどこか、という点です。
「移動」という視点だけで見れば、他の鉄道会社、航空、高速バス、自動車などが競合になります。しかし、生活ソリューションへ事業領域を広げるほど、競合は交通機関だけではなくなります。
たとえば、日常の購買、決済、ポイントを押さえるPayPayや楽天。さらに、スマホウォレット、クレジットカードのタッチ決済、地図・乗換アプリ、旅行・宿泊予約サービスなども、広い意味では競合になっていきます。
つまり、競争の軸は、利用者にとって「どの鉄道に乗るか」から、「どのサービスが自分の生活を便利にしてくれるか」へと広がっていくのです。
これは、成熟市場における企業変革の難しさでもあります。いまの市場で大きな成長が見込みにくいなら、企業はいずれ市場そのものを捉え直さなければなりません。しかし、市場を変えれば、競合も変わります。これまで競合ではなかった企業が、新しい市場では強力な競合になるのです。
これはJR東日本だけの話ではありません。あなたの会社でも起こり得ることです。
もし、いま戦っている市場の成長が見込みにくいなら、別の市場へ事業領域を広げる必要があるかもしれません。そのとき、自社は新しい市場で勝ち残るだけの強みを持っているでしょうか。
反対に、いまの市場に、ある日突然、異業種の企業が参入してくることもあります。そのとき、自社は顧客との接点を守り、選ばれ続ける準備ができているでしょうか。
市場を再定義するとき、競合もまた再定義されます。JR東日本の挑戦は、成熟市場に向き合うすべての企業にとって、決して無縁ではない問いを投げかけているのです。







