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連載『ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワード』の今回のキーワードは「責任ある積極財政」です。高市政権の成長投資への期待が高まる一方、長期金利は一時2.9%まで上昇しました。積極財政と緊縮財政の実態を予算や国の長期債務残高から検証し、「責任ある」が意味するものを考えます。(ダイヤモンド社編集部編集委員 竹田孝洋)
長期金利2.9%が問う
「責任ある」の具体的な中身
今回のキーワードは「責任ある積極財政」です。
7月9日、長期金利の指標となる新発10年国債利回りは一時2.9%まで上昇し、1996年以来、約30年ぶりの高水準を付けました。
債券価格と利回りは反対方向に動くため、これは国債が売られ、価格が下落したことを意味します。
その前段階となったのが、7月3日の金利上昇です。10年国債利回りは一時2.81%まで上昇しました。
市場で材料視されたのが、6月30日に示された「経済財政運営と改革の基本方針2026」、いわゆる骨太の方針の原案と、「日本成長戦略」の原案です。
高市早苗内閣は「責任ある積極財政」を掲げ、AI・半導体、造船、量子、航空・宇宙、防災・国土強靱化など17の戦略分野を設定しました。
日本成長戦略案では、そのうち62の主要な製品・技術等を対象として、2040年度までの官民による国内投資額を総額370兆円超と見込んでいます。
では、市場は骨太の方針原案や日本成長戦略案の何を問題視したのでしょうか。
一つは、巨額の官民投資を実現するために、政府がどの程度の財政支出を行い、その財源をどう確保するのかが明確ではなかったことです。
骨太方針原案は、危機管理投資や成長投資に予算を重点配分するため、新たな投資枠を設ける方針を示しています。政府は、成長投資によって民間投資を引き出し、経済成長と税収増につなげる考えです。
ただし、政府支出が先に増える一方、民間投資や成長率、税収が想定通りに伸びなければ、国債の増発に頼ることになるのではないかという疑念が残ります。
もう一つ、市場の警戒を招いたのが、財政運営の目標の示し方です。
骨太の方針原案では、「強い経済」の構築と「財政の持続可能性」の実現が一体的な目標として掲げられました。原案は、政府債務残高のGDP(国内総生産)比を安定的に低下させる方針を示しており、財政規律を放棄したわけではありません。
しかし、これまで前面に掲げられてきた「財政健全化」という表現や、基礎的財政収支の黒字化目標の位置付けが変化したため、市場では、高市内閣が従来よりも財政支出の拡大を重視するとの見方が強まりました。
金融政策への言及も、市場の警戒を強めました。
骨太の方針原案は、「強い経済」を実現するためには、日本銀行による適切な金融政策運営が「非常に重要」であるとしました。
その上で、日銀法や政府・日銀の共同声明の趣旨に沿って、政府と緊密に連携し、適切な金融政策を運営するよう日銀に求めています。
政府と日銀が経済や物価に関する認識を共有すること自体は、不自然ではありません。それでも市場では、政府が日銀の追加利上げをけん制し、低金利を維持するよう求めているのではないかとの警戒が広がりました。
政府が成長投資を進める上で、金利上昇による景気への悪影響や、国債の利払い費の増加を避けたいと考えるのは自然です。ただし、インフレ圧力が強まっているにもかかわらず、必要な利上げが遅れれば、物価上昇が長引く恐れがあります。
市場参加者が将来のインフレを強く警戒すれば、日銀が政策金利を据え置いても、長期金利は上昇します。低金利を維持しようとすることが、かえって将来の長期金利を押し上げる可能性もあるのです。
市場では、骨太の方針の原案の公表がきっかけとなったことから今回の金利上昇を「骨太ショック」と呼び始めました。
こうした財政・金融政策への警戒がくすぶる中、米国がイランの再攻撃に踏み切ったことで中東情勢が再び緊迫し、原油価格が上昇しました。原油高によって日本のインフレ圧力がさらに強まるとの見方が、日銀の金融政策が物価上昇に後れを取るのではないかという懸念を増幅しました。
財政支出の拡大、日銀の利上げの遅れ、原油高によるインフレという複数の懸念が重なり、10年国債利回りは一時2.9%まで上昇したのです。
複合的な要因があるとはいえ、財政悪化懸念で金利が上昇したことは確かです、長期金利の上昇は、「責任ある積極財政」のうち、「積極」の部分だけが先に伝わり、「責任ある」の具体的な内容が十分に伝わらなかった結果とも考えられます。
「責任ある積極財政」という言葉は、25年10月の高市政権発足以降、繰り返し使われてきました。
積極財政の反対語として、しばしば「緊縮財政」が挙げられます。
高市内閣の前の石破茂内閣や岸田文雄内閣の財政運営は、積極財政を支持する側から、緊縮的だったと評されることが少なくありませんでした。高市首相も1月19日の衆議院解散表明の記者会見で、「行き過ぎた緊縮志向」と「未来への投資不足」の流れを終わらせると表明しています。
言葉のイメージからすれば、積極財政とは国債を発行して歳出を増やすことであり、緊縮財政とは歳出を削減したり、増税したりすることだと考えるのが自然でしょう。
高市内閣の経済政策、いわゆる「サナエノミクス」が手本とするアベノミクスでも、第二の矢は「機動的な財政政策」でした。景気や経済成長を支えるため、政府が必要に応じて財政支出を拡大するという考え方です。
では、実際に安倍晋三政権の下で歳出が拡大した一方、「緊縮」とされた岸田政権や石破政権では歳出が削減され、増税によって国の借金が減ったのでしょうか。
結論を先に言えば、実態はそれほど単純ではありません。
次ページでは、当初予算と補正予算、国債残高、歳出増に伴う財源の手当てを検証し、「責任ある積極財政」と、いわゆる緊縮財政の違いがどこにあるのかを考えます。







