飛行機は、利用者が想像する以上に「綿密なチームワーク」で運航されている。チェックインカウンターが止まれば搭乗手続きが遅れる。搭乗口でトラブルが起これば出発時刻に影響する。機内でCAがひとりの乗客への対応に追われれば、本来優先すべき保安業務がおろそかになる恐れがある。
実際に、近年は乗客による暴力行為や迷惑行為によって飛行機が引き返したり、目的地以外の空港へ緊急着陸したりする事例が繰り返し発生している。ひとりのカスハラが、数百人の旅程を狂わせ、安全運航そのものへ影響を及ぼしている。
SNS時代は「暴言」だけでなく
「拡散」がいちばん怖い
カスハラという言葉自体は、10年ほど前から広まり始めた。2020年代以降で深刻化したと思われるのが、「SNSによる誹謗中傷」だ。CAやグランドスタッフに対して怒鳴る、居座る、脅すにとどまらず、スマホで無断撮影し、その映像や顔写真をSNSへ投稿するケースがとりわけ問題になっている。
JALは、「SNSによる誹謗中傷は該当者への精神的ダメージが極めて大きく、被害回復も困難を極めるため、会社として強い危機感を持っている」という。ひとたびネット上へ公開された画像や動画は、完全に削除することは難しい。何年も社員を苦しめる可能性が大いにある。
空港ラウンジで「自分は上級会員だから」
特別扱いを求めるケースも
カスハラ専門家の西尾氏は、カスハラをする人の多くは、自分が加害者である自覚を持っていないという。「自分は正しい」「航空会社の対応が悪い」と思い込み、長時間のクレームや暴言、執拗な要求へ発展する。
また、空港ラウンジは公共空間であるにもかかわらず、「自分は上級会員だから」などと携帯電話のマナー違反を行うなどのケースも増えているという。「特権意識はカスハラの温床になりかねない」と警鐘を鳴らす。
もちろん、利用者が航空会社へ苦情や改善を求める権利まで否定されるものではない。しかし、その伝え方が従業員の人格を傷つけたり、業務を妨害したりする段階に至れば、それは正当なクレームではなく、カスハラである。
筆者は過去に、ある国会議員が飛行機の遅延に関して執拗に持論を展開したのを、記事化したことがある。議員本人は、航空会社に対して「指導」でもしているつもりだったのだろう。しかし、ハッキリ言って度を越したクレームだった。







