実際、「インサイド・トヨタ」に違和感を覚える人も少なからず存在している。SNSでは、「NHKの民放化が止まらない。1社の特集を公共放送として放送すべきなのか」「すごいなこの特集。密着の体を取りつつNHKなのにトヨタの大宣伝」という声もあると報じるメディアもある。

 一視聴者として「インサイド・トヨタ」を楽しんだ人は「ひねくれたものの見方をする人たちもいるもんだ」と呆れるだろうが、これまでのトヨタの「メディア戦略」を知っている人ならば、こういう受け止めになるのもしょうがない部分もある。

トヨタ・豊田章男会長と
オールドメディアの因縁

 トヨタは、というよりもトップの豊田章男会長は、「自分たちの理想とする情報発信」というものにこだわりを持って、実際にその情報インフラを整えてきた事実があるからだ。

 その象徴が2019年に立ち上げられた「トヨタイムズ」である。

 元テレビ朝日アナウンサーで、報道ステーションメインキャスターを務めた富川悠太さんを迎えて、トヨタのさまざまな情報を発信するオウンドメディアだが、これはオールドメディアからは「脅威」とされてきた。

 例えば、2023年1月、トヨタで14年ぶりに社長交代がなされた際の発表も、テレビや新聞の記者を集めた記者会見ではなく、「トヨタイムズ」で行われた。2021年に東京パラリンピックの選手村で、トヨタが開発した自動運転車が選手と接触する事故があった際に、豊田氏が陳謝したのは「トヨタイムズ」だ。

 なぜこんなオールドメディアのメンツを潰すようなことをするのか。

 メディアや企業PRの世界では、豊田会長がテレビや新聞に対する「強い不信感」があるとされてきた。例えば、2020年に調査報道で定評がある会員制情報誌「FACTA」でこんな記事が掲載された。

《トヨタ社長 「NHK」に大激怒 Zoomで記者に怒りを爆発。その後、渉外広報本部幹部が局に出向いて報道姿勢に難癖」(2020年9月号 FACTA

 つまり、「トヨタイムズ」で自社の情報発信に力を入れるのは、トヨタについて事実を捻じ曲げる「偏向報道」をするようなオールドメディアに、豊田会長が辟易としているからではないか、という見方があるのだ。

 そういうトヨタとオールドメディアの“ビミョーな距離感”を理解している人は、今回の「インサイド・トヨタ」における「次世代カローラ推し」の裏にある“オトナの事情”を勘繰ってしまうのではないか。