メディア報道は情報操作
裏の意図を読む力の重要性

 もし本当にトヨタにヘソを曲げられてしまったら、オールドメディアには大打撃だ。民放や新聞は広告出稿を止められてしまうということもあるが、トヨタイムズの「後追い」のようなことばかりしているのは報道機関の沽券(こけん)に関わる。公共放送NHKとしても、日本を代表する企業の最新情報、特ダネが入手を入手して視聴者に届けるのは責務と言える。

 では、豊田会長からあまり信用されていないオールドメディアが、他社を出し抜いて、トヨタのスクープを入手するにはどうすればいいのか。トランプ大統領ではないが、そこで重要なのが「取引」(ディール)である。

 つまり、Nスペがこれまでマスコミが入ることができない最重要会議や開発現場まで踏み込めたのは、それを豊田会長に承認させるだけの「NHKならではの歩み寄り」があったのではないか?だからこその「カローラ連呼」だったのではないか?

 もちろん、これはあくまでも筆者の邪推に過ぎない。ただ、今回のNHKスペシャルから宣伝臭が漂い、企業PRの側面が強くなっているのは事実だ。

 番組内で豊田会長や社員が盛んに中国メーカーの脅威を口にしていたように、劣勢に立たされているトヨタのために、次世代カローラの販売増を後押しすることが、NHKとして「公共性あり」と判断をしたという可能性もある。

 真相はわからないが、今後もこのように「公平・公正」を掲げていたオールドメディアが政治や企業にすり寄っていくということだけは断言できる。貧すれば鈍するではないが、経営的にも影響力的にも弱っているテレビや新聞側が譲歩して、取材対象者側のリクエストが通ることが増えていくはずだ。

 それは一般読者や視聴者にとってメディアリテラシーを向上させなければいけないということでもある。

 海外では、メディアの報道はスピンコントロール(情報操作)とほぼ同義で受け取られ、そこには必ず「意図」が隠されているとされている。

「インサイド・トヨタ」を見て、「NHKの取材力は圧巻!」「こんな企画を受けたトヨタ側もあっぱれ!」という呑気な感想を抱くだけではなく、その背後に隠された狙いを読み解いていく力が、これからは求められていくのかもしれない。