しかし、企業PRやプロモーションを仕事としている人たちが衝撃を受けたのはそこではない。実はこの番組では自動車に欠かすことができないプラットフォームの開発現場で奮闘する社員たちの姿を映しながら、トヨタが中国メーカーと戦っていくうえでカギとなる「次世代カローラ」がこれでもかというほど取り上げられ、カローラ開発チームが頻繁に登場して「カローラ」という車名も連呼されているのだ。
冒頭で触れた「営業広告または売名的宣伝を目的とする放送は、いっさい行わない」というルールのあるNHKで、その総力を集結して制作される報道・ドキュメンタリー「NHKスペシャル」でこれはかなり異例のことだ。
もはや民放…
公共放送がトヨタに肩入れ
実際、2008年の世界販売で世界一の自動車メーカーとなったトヨタの内部にカメラが入った「NHKスペシャル 自動車革命」では、競争に勝ち抜くための「新たな戦略車の開発現場」が取り上げられているが、車名は放送されずに「プラグインハイブリッド車」と呼ばれ、開発担当者も「プラグインハイブリッド車開発担当」というテロップが付いている。
という話を聞くと「プロジェクトX」では過去に日産フェアレディZが取り上げられているし、つい最近もマツダのロードスターが紹介されているぞ、と思うだろう。しかし、これは開発秘話物語なので致し方がない部分もあるし、「世界一売れたスポーツカー」とか「市民に愛されたスポーツカー」などなるべく車名を宣伝しないような配慮がなされている。
企業の新商品や新サービスを取り上げることの多い「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」でさえ、企業名や商品名を映像として流すが、それを連呼することはない。
例えば、「インサイド・トヨタ」と同日に放送された「進化が止まらない!回転寿司のヒミツ」の放送回で取り上げられているのは「くら寿司」だが、番組内では「年間300種類の新メニューが登場するチェーン店」という表現にとどめている。
これから発売されて、しかもトヨタの業績にも大きく左右するであろう「次世代カローラ」を、あのNHKスペシャルがここまでデカデカと取り上げて、しかも車名まで連呼してくれるというのは、これまでの企業PRの常識からは考えられないことなのだ。
しかも、ご覧になった方はわかると思うが、番組ではカローラ開発チームの「トヨタがこけたら、日本もこける」という言葉も紹介するなどして、次世代カローラが成功をおさめなければ、開発のリードタイムが脅威的に短い中国メーカー・BYDとの競争に日本の自動車産業が敗れてしまうというような印象を視聴者に与えている。
つまり、「公平・公正」と「不偏不党」を掲げる公共放送のわりに、思いっきりトヨタに肩入れをして、次世代カローラを応援しない者は日本人にあらず、というようなムードを煽っているようにも見えてしまうのだ。これでは民放の経済番組とほとんど変わらない。







