フェル万事休す。ニヤニヤしながら見つめるスズキのスタッフ陣。なかには困窮する私の姿を笑顔で写真に収める人もいる。何という非道。
動けなくなって困っていたら、スタッフに写真を撮られていた…… Photo by A.T.
出られた! Photo by A.T.
横に立つスタッフが、「そのままアクセルを踏み込んでください」と言う。マジか? 彼を信じて穏やかにアクセルを踏み込んでみる。……と、空転していた後輪の回転が「ガッガッ」という音とともに抑えられ、地面に残った車輪が土を掴むではないか。ノマドは実にあっけなく、そのままモーグルを乗り越えてしまった。凄い。本当に凄い。これが噂の「ブレーキLSDトラクションコントロール」である。
ブレーキLSDトラクションコントロールの実力
試乗車のタイヤは地味なノーマルだ。お世辞にもグリップ力が高いとは言い難い。本格的なオフロードタイヤに履き替えたら一体どのような走破性を見せるのか。
普通のオープンデフは左右輪へほぼ同じ大きさのトルクを伝える仕組みになっている。だから片輪が浮いて空転を始めると、反対側の接地輪へ送るトルクも低く制限されてしまう。地面に着いてタイヤにグリップが残っていても、それを有効に使えないのだ。
ノマドは空転輪“だけ”にブレーキをかける。浮いたタイヤに対して“擬似的な抵抗”をつくることで、反対側の接地輪へ送るトルクを増やすのである。ブレーキでクルマを止めるのではない。ブレーキを使ってクルマを前へ進めるのだ。しかも4Lで空転輪を制動しながらも脱出に必要なエンジントルクは十分に残されている。
ドライバーはタイヤが空転しても右足を戻してはいけない。賢い電子制御を信じてアクセルを踏み続ければ良いのだ。
難所をクリアした。スタッフが親指を立てている。私も親指を立てて返す。満面の笑顔である。ブレーキLSDトラクションコントロールの効果は絶対的、徹底的、圧倒的だ。
無論この走破性の“手柄”はブレーキLSDだけのものではない。まず前後のリジッドアクスルが大きく動き、可能な限りタイヤを地面へ残そうとする。それでも接地を失ったら、ブレーキLSDが残されたタイヤのグリップを最大限に引き出す。機械が粘れるところまで粘り、その限界を超えた先を電子制御が支えるというわけだ。
いや~、楽しいねぇ Photo by A.T.







