それは、いくつかの「どん底」を語らずしては考えられない。リーマンショックで赤字転落したのは先に述べたが、09年3月期決算では創業者期以来となる4610億円の営業赤字を計上した。さらなる苦境は、その直後の「トヨタ最大の危機」のひとつ、米国リコール問題である。

 アクセルペダルの不具合にまつわる対応の遅れ、情報公開の不足などは、トヨタというブランドの信用力を一気に低下させた。厳しいバッシングを受けながら、当時社長だった豊田章男社長氏は米国議会の公聴会に出席し、品質管理の徹底の改善策を述べ謝罪した。

 次第に事態は沈静化し、業績も回復基調になったが、今度はグループのダイハツや日野自動車、そして豊田自動織機も「認証不正」が明るみになる。子会社や関連企業の不祥事が相次いだ影響は、再びトヨタ本体への信用問題にも及んだ。

 現場の品質文化を誇るトヨタグループで複数の「ごまかし」が起きた事実は深刻だ。結果として日野は、トヨタ子会社から離脱することになった。

 しかし、一連の不祥事と危機対応が、結果的にトヨタのリスクマネジメントを強くし、グループ全体で品質の徹底、「もっといいクルマを作ろうよ」(章男会長の言葉)という原点回帰につながった。

 とにもかくにも、6年連続世界首位のトヨタとて、決して油断はしてはいけない。最大のライバルだったVWが凋落したのを他山の石に、大きな教訓として学び続けなければいけない。

 一方で、中国車やテック企業との対抗あるいは連携をどう打ち出していくか。守りばかりで成長機会を見過ごしてもいけない。

 とどのつまり、トヨタが危機感を持ち続け、「いいクルマを作ろうよ」と何度でも原点回帰できるかが、唯一無二の勝ち筋になると思う。

著者・佃義夫さんのプロフィール