しまむらが抱える経営課題:
好業績でキャッシュ活用が追いつかない

 しまむらにとっての経営課題は、B/Sの分析でも触れた、好業績を背景に蓄積された手元資金の活用をどうするかだ。しまむらではこれまで、郊外を中心としたドミナント戦略(特定の地域に対する集中的な出店戦略)をとってきたが、最近は出店数が不足し、資金が余りやすい傾向にある。都市部やショッピングセンターへの出店など、新たな出店戦略の実行が求められる。

 また、しまむら事業だけではなく、アベイルやバースデイといったしまむら以外の業態の成長も期待される。26年2月期の連結売上高(営業収入を除く)に占めるしまむら事業の割合は約74%で、20年2月期の約77%から約3ポイント低下してはいるが、もう一段の成長のためには、しまむら事業以外の底上げが必要だ。

 一方でしまむらは、資本効率の向上を目的として、26年1月に同社初となる約456億6600万円という大規模な自社株買いを実施し、投資家への還元にも配慮している。しかし、マネックス系投資ファンドであるマネックス・アクティビスト・マザーファンドは、26年2月期の株主総会に株主提案を提出し、配当性向60%相当への配当金引き上げを求めた。しまむらは配当性向35%程度を目安として掲げているが、それに比べて大幅な引き上げを求める内容だ。

 なお、日本の上場企業における配当性向の平均値はしまむらと同程度の35%前後であり、それと比較しても60%という水準はかなり高い。この株主提案は株主総会において反対多数で否決されたものの、成長投資が停滞するようであれば、株主還元の強化と資本効率の向上を求める声は強まるだろう。

 しまむらとしては、成長投資を着実に実行するとともに、株主還元も含めた資本配分のバランスをとることで、投資家からの支持をさらに高めていく必要がある。

矢部謙介(やべ・けんすけ)/中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授。戦略コンサルティング会社ローランド・ベルガーなどを経て現職。マックスバリュ東海社外取締役。会計・財務の視点から経営戦略や企業価値を読み解く研究・執筆を行う。
著書に『決算書の比較図鑑』『会計指標の比較図鑑』『武器としての会計思考力』『武器としての会計ファイナンス』『粉飾&黒字倒産を読む』(以上、日本実業出版社)、『決算書×ビジネスモデル大全』(東洋経済新報社)など。著書累計発行部数10万部超。
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