340mm延長分の床や屋根、ドアが増えるのだから、重くなるのは当然だ。だが増えた重量は、単なる“延長料金”ではない。長くしたことで生じる“弱点”を消すために、外から見えないフレームの内側にまで補強が施されているのだ。
5ドア化で失われる軽さを少しでも抑えつつ、必要な強度は絶対に譲らない。八ヶ岳のプロが説いた「軽さこそ正義」と、量産車として、そして本格オフローダーとして守るべき強度。その二つを同時に成立させるための重量増なのである。
変わったのに、変わって見えてはいけないデザイン
F:外側はどうでしょう。長くなったのに、ヌメッとしたウナギイヌ感はありませんよね。すごく自然に伸びている。
スズキ 商品企画本部 四輪デザイン部 エクステリア課 主任 福島耕一郎さん(以下、福):フロントドアは3ドアより短くして、Bピラーの位置も少し前へ動かしています。サイドボディ、フロントドア、リアドアは今回新しく造っています。Aピラーより前の部分とバックドアは3ドアと共通ですが、側面は新規です。
F:同じに見えて、実はかなり違う。
福:そうですね。シエラと大きく違って見せることが目的ではありませんから。3ドアのイメージを残しつつも、キチンと5ドアにする。それがデザイン上の課題でした。
スズキ 商品企画本部 四輪デザイン部 エクステリア課 主任 福島耕一郎さん Photo by A.T.
新しく設計した部分は、分かりやすく主張したくなるのが人情というものだろう。「ここを変えました」「こんなに手間をかけました」と声高にアピりたい。「あれはオレがやったんだよね」と浜松の飲み屋で自慢したい。ところがデザイナーに課されたミッションは、「大幅に造り直しながらも、変わったことを感じさせない」という、正反対のものだった。
見た瞬間に「5ドアのジムニーだ!」と分かること。その一方で、無理やり引き伸ばした不格好なクルマには見えないこと。前後のドアもサイドボディも新たに起こしながら、その苦労を表に出していけないのだ。何と因果な商売だろう。
F:これだけ造り直したのに、世間からは「シエラを伸ばしただけ」と言われてしまう。デザイナーとしてちょっとムカつきませんか?
福:いえいえ。変えたことを感じさせないくらい自然に見せる、これもデザインの仕事です。







