“良いリーダー”は、情報を流通させていく

「リーダーになろう」という意識はなかったものの、劇団の座長となった鴻上さん。劇団を立ち上げたばかりの頃は、劇団員の人間関係の調整に心を砕いた。現在、人生相談コーナー(鴻上尚史のほがらか人生相談)であらゆる悩みに回答できるのも、そのときの経験があったからだという。

 組織を円滑に維持していくために、リーダーに必要なことは何か?

鴻上 当時、「リーダー論」についての本を読んだり、自分でも考えてみたりして、リーダーというのは「情報を流通させる人間」だという結論に至りました。日本には「リーダーは人を引っ張っていく」という認識がありますが、それよりも、滞りがちな情報を流通させられるのが良いリーダーだ、と。最近の言葉でいうと、「ファシリテーター」に近いイメージではないでしょうか。

 たとえば、当時の活動では、複数の公演場所の候補があがったとき、座長の僕が決めるのではなく、「こっちの劇場はお客さんがたくさん入るけど、劇場費が高い。逆に、こっちの劇場は安いけど、お客さんはそこまで入らない。どうしたらいいと思う?」と、具体的な情報を明らかにして、みんなで考えてもらうようにしました。劇団員同士で誹謗中傷のやり合いがあったときも、「ちょっと当事者を呼んできて」と言って、その場でお互いが思っていることをオープンに話してもらいました。そうやって、常に情報を流通させていたから、劇団も壊れることなく、運営を続けることができたのでしょう。

 それと、継続できた大きな理由は、お客さんが増え続けたからです。人気があっても、内部はボロボロという劇団もありますから、やはり、情報を滞らせないことが、組織を維持するうえでは大切だと思います。

 働き方に迷う新入社員に、上司や先輩社員はどう向き合っていけばいいか――鴻上さんは、自分の情報も開示することが大切だと語る。

鴻上 上司や先輩社員が、「○○しろよ」「○○したら迷いがなくなるよ」ではなく、「自分も○○に迷っていた」と、部下や新入社員に話すこと。迷わずにまっすぐ歩いて来た人なんて、ほとんどいないでしょう。だから、自分が迷った経験を伝えたらいい。いまだに迷い続ける管理職や上司も、それが格好悪いと思わずに話していくこと。「自分も迷っていた」「いまでも迷っている」と、情報をオープンにすれば、部下も若手社員も安心するはずです。