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日揮ホールディングス、千代田化工建設、東洋エンジニアリングの専業エンジ3社は、医薬品プラントを国内事業の柱として拡大を図っている。コロナ禍を契機に政府の補助金が投入され、バイオ医薬品などの設備投資が急拡大。一方、人手不足でエンジ会社が案件を選ぶ「売り手市場」の状況も生まれた。海外の大型EPC(設計・調達・建設)に代わり、医薬品プラントは「断る経営」に転じる3社の新たな稼ぎ頭になるのか。長期連載『エネルギー動乱』内の特集『日揮・千代田化工・東洋エンジ、エンジ「御三家」の反転攻勢』の本稿では、医薬品プラントビジネスのポテンシャルに加え、同ビジネスが抱えるジレンマについても探る。(エネルギージャーナリスト 宗 敦司)
医薬品プラント市場がコロナ禍で一変
エンジ会社が案件を「選ぶ」時代に
専業エンジニアリング会社にとって、医薬品プラントは突然現れた新市場ではない。その歴史は50年ほど前までさかのぼる。石油化学やファインケミカルで培ったプロセス技術を応用し、低分子医薬品をはじめ高分子のバイオ医薬、さらに最近では中分子医薬や再生医療まで対象を広げてきた。
長年の案件実績では日揮ホールディングスが頭一つ抜けているものの、現在では日揮ホールディングス、千代田化工建設、東洋エンジの3社で対応可能な技術分野に決定的な差があるわけではない。3社とも医薬品の「プロセスエンジニアリング」を手掛けられる数少ない企業だ。
ただこの医薬品プラント市場は、後発医薬品の製造工場の需要が一巡したことで一時はやや低調に推移していた。その市場を一変させたのが新型コロナウイルスだった。パンデミックによって、日本国内でワクチンを十分に生産できないことや、医薬品原薬を海外に依存する供給網の脆弱性が表面化した。
この事態に政府は国産ワクチンやバイオ医薬品の生産体制強化に乗り出し、平時にはバイオ医薬品、パンデミック時にはワクチンを生産できる「デュアルユース設備」などに補助金を投入。抗菌薬、再生・細胞医療、遺伝子治療などでも支援策が相次ぎ、設備投資案件が急増、それが現在まで続いている。
こうした現状は「補助金バブル」という側面があるのは事実だが、政府支援はさまざまな名目で当面続くとみられ、少なくとも今後4~5年程度は現在の繁忙状況が続きそうとの見方が業界にはある。ただその先まで同じ勢いが続くかについては見通しにくい。
専業エンジにとってこの市場が魅力なのは、案件規模とリスクのバランスである。1件当たりの事業規模は数十億円から、大型でも500億円程度。最大で1兆円を超えるLNG(液化天然ガス)などの大型海外EPC(設計・調達・建設)に比べればその規模は小さいが、国内案件だけに為替変動や政情不安といったカントリーリスクは小さく、案件によっては粗利益率10%以上を確保できる。つまり、売上高のボリュームでは海外の巨大な案件に及ばないが、一件の失敗で会社全体の業績を揺さぶるリスクを抑えながら、利益を積み上げやすい。
専業エンジ3社の新たな収益源に浮上した国内の医薬品プラントだが、ここへきて人手不足で製薬会社とエンジ会社の力関係が変わり、発注方式まで変化し始めている。次ページでは、稼げる案件を絞る「断る経営」にかじを切った専業エンジ3社のさらなる商機や医薬品プラント特有のジレンマについても明らかにする。







