企業が広報目的で社員の写真を撮影・公開する場合、本人の同意を得ていたとしても、それは「研修風景をPRする」という当初の目的の範囲内での同意であり、その後の炎上によって実名や出身大学、交際関係などの私生活上の情報まで拡散されることについてまで、通常は想定・同意していたとはいえません。
また、SNS投稿は企業の判断により行われるものである以上、投稿をきっかけとして従業員が誹謗中傷や個人の特定などの被害を受けた場合には、企業として適切な対応や被害拡大防止措置を講じることが重要です。
対応が後手に回ると、従業員が深刻な精神的負担を受け、休職や退職に至るおそれがあります。さらに、そのような事態を招いた経緯や企業の対応状況によっては、安全配慮義務違反などを理由として、企業の管理責任や損害賠償責任が問題となる可能性もあります。
悪意ある拡散に加担した人の
責任を追及することは可能
――悪意のあるコメントや情報の拡散に加担した個人には、責任はないのでしょうか。
細井弁護士:悪意のあるコメントを書き込んだり、情報の拡散に加担した個人にも、当然、法的責任が生じる可能性があります。「自分はコメントしただけ」「リツイートやシェアをしただけ」という感覚でいる人は少なくありませんが、それぞれの行為に応じて責任が問われることがあります。
例えば、「学生時代から素行が悪く、問題ばかり起こしていた」といった事実と異なる投稿をした場合には、名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)が成立する可能性があります。
名誉毀損罪は、具体的な事実を摘示して他人の社会的評価を低下させた場合に成立します。たとえその内容が真実であっても、公共の利害に関わらない私人の私生活上の事実を公表した場合には、違法となることがあります。
また、侮辱罪は、インターネット上の誹謗中傷が社会問題となったことを背景に、令和4年(2022年)の刑法改正により法定刑が引き上げられました。
従来は「拘留または科料」のみでしたが、現在は「1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」とされています。処罰の対象となる行為自体に変更はありませんが、インターネット上の誹謗中傷に対して、より厳しく対処していくという国の姿勢が示されたといえます。







