
日々目まぐるしく変わるAIモデルやツール、仕事の現場では実際にどう使われているのか?モデルの種類が激増する中いろいろと混乱も起きているようで……。企業でAIが使われる現場では一体何が起きているのか。特集『DX2025 エージェントAIが来る』(全21回)の#10は、ITインサイダー座談会の4回目。「実践編の現場の本音AI活用術」を考えよう。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
Henry @HighWiz 大手SIerの大規模プロジェクトのPMを経て総合コンサルで活躍中
ケビン松永 @Canary_Kun 大手SIerから独立してフリーのITコンサルやってます
よんてんごP @yontengoP ブラックIT企業を渡り歩く病人X(旧Twitter)er。最近はブラックでなくなったらしい
むぎSE @MUGI1208 社内SE社畜ツイッタラー。炎上プロジェクトの遭遇率が高め
shin @shin_ofshins ウェブとアプリに詳しいコード書く系スタートアップ経営者
かち @kachi_saas 諸事情で外資ITソフトウエアベンダーを卒業★した人
「いったんもんでもらってエイヤでガッとやって」って会議は
議事録に起こすのは不可能だからちゃんとしろってAIに怒られた
――今AIでの作業効率化をうたうツールがめちゃくちゃたくさん出ていますけど、ホントに使い物になってるものってどのくらいあるんでしょうか。そういえばAI議事録のAIスタートアップ、オルツの経営陣が粉飾決算で逮捕されましたね。デジタル庁大臣2人が激推ししてた会社。
かち オルツ疑獄くる?政治案件だから上場許可されてた、とか出てきたりするんかな。
よんてんごP(4.5P) ぜひ裁判の記録は自社サービスの「AI GIJIROKU」で取ってほしい。
でもこういう議事録ってちゃんとした会議をする会社はいいけど、よくある場末企業の「先方でいったんもんでもらって、で、エイヤでやって後はもうガッとやって最後はギュッと握って!」みたいな会議を投げても使い物にならないよね。
一度GPT-5で試したことがあるんですが、「ギュッと握るとは何らかの合意を得ることであると思われますが、ちゃんと確認すべきです。こういった曖昧な表現は、会議では不適切な表現です」っていう回答まではくれるけど、そのままやっぱり議事録にはできない。こういうおっさんが生き残る限りは、こういうのをよしなにまとめる特殊能力を持つ人は必要になる。
――ビジネスマン関連で言うとあとはスライド生成とか。
shin この前、ソフトバンクが日本向けパワポ生成のAIを発表してましたよね。
4.5P satto workspace。サットはローマ字です。
むぎSE(むぎ) お役所みたいな文字ビジーのパワポ作れるかな。
shin お役所のポンチ絵を作るのは、まだAIじゃ難しいかも。情報密度めちゃくちゃ高く、意味があることしか書かれてないから。
かち よく自称コンサルが、「分かりにくい。俺だったらこう整理する」って取り上げて炎上してるやつですね。
ケビン松永(ケビン) あのポンチ絵パワポは、政策に関係するいろんな政治家の「必ず入れてほしい」と要望するキーワードが、全部乗せになってるんだとか。
Henry 「など」と「等」って1文字にめっちゃこだわる。あのごちゃっとしたパワポの中にたった一つ、その文字が入ってるだけで、「ほら、これとひも付いてるでしょう」って言い訳で予算が取れるから。でも目立たせたくないから、ここの位置からずらして、この右端のところにちっちゃく入れておきたい、みたいな。AIには分からん世界ですよ。
むぎ 翻訳とかはどうですかね、翻訳を主業務とする企業はなくなっちゃうのかな?
かち ビジネス翻訳とかは、本当に発注することが減ったんじゃないかなと思います。10年前だったら、例えば、紙のパンフレットを作る、となったときにプロの翻訳家に発注したりしてたけど、今だとよっぽどのことがないとやらない。特に日英翻訳だとページ数が多いとか、専門用語が多いとか、シーンが限定されそう。
shin お役所で英語翻訳の仕事をやってる人に聞いたんですけど、日本語文章の曖昧さを、曖昧なまま翻訳するっていう謎テクニックが必要らしい。白黒はっきりつけないとか主語がはっきりしないとかどちらにでも取れるとか、ぼやかしたまま英語で書く謎テクニック。よし、こういうのぜんぶやってくれるガラパゴスAIを作りますか?
――あと聞きたいのは「結局AIの何モデルが最強か」ってことですね。たくさん出過ぎて全然分からない。企業ITの現場では何がよく採用されてるとか傾向みたいなのはあるのかな。皆さんの現場ではどうでしょう?