日揮・千代田化工・東洋エンジ、エンジ御三家の反転攻勢Photo by Tohru Sasaki

世界的な大型プラントのリスク増大に、専業エンジニアリング3社はそれぞれ異なる答えを出し始めた。東洋エンジニアリングは「造って終わり」からの転換を掲げ、千代田化工建設は超大型LNG(液化天然ガス)プロジェクトを1社で抱えるビジネスとの決別を鮮明にした。では、最大手の日揮ホールディングスはどうするのか。長期連載『エネルギー動乱』内の特集『日揮・千代田化工・東洋エンジ、エンジ「御三家」の反転攻勢』の本稿では、佐藤雅之会長兼社長CEO(最高経営責任者)に日揮が描く独自の成長戦略と業界再編の可能性などを聞いた。(エネルギージャーナリスト 宗 敦司、ダイヤモンド編集部 金山隆一)

「LNGは脱炭素の現実解」需要増加で案件確保狙うも
“ランプサム”は「全リスクの請負ではない」

――ホルムズ海峡危機を経て、世界のエネルギー市場や顧客の投資姿勢にどのような変化が出ていますか。

 これまでは経済性を重視して中東からエネルギーを調達してきましたが、今回の危機で、調達先を分散する必要性が改めて意識されたと思います。LNGはもともと調達先が比較的分散していますが、日本は原油の中東依存度が非常に高い。今後は中東以外からの調達や、国内でつくれる地産地消型エネルギーへの関心も高まるでしょう。

 もう一つは、石油化学原料です。ナフサも原油からつくられるため、中東情勢の影響を受けます。そこで、バイオマスやバイオエタノールから化学品をつくる技術や、廃プラスチックなどを原料に戻すケミカルリサイクルへの関心も高まると思います。また、原油の調達先がかわれば、原油の性状に合わせて国内製油所の設備を改修したり、触媒をかえたりする需要も出てくる可能性があります。

――世界のLNG市場を今後どのように見ていますか。

 LNGが重要なエネルギーであることは間違いありません。英シェルは世界のLNG需要が現在の年間約4億2000万トンから2050年には約7億トンへ、65%増えると予想しています。その通りになるかは分かりませんが、需要が増加する方向は変わらないと思います。

 脱炭素化が求められる中でも、LNGは安定供給でき、価格も比較的手頃で、二酸化炭素(CO2)排出量の面でも現実的な選択肢です。LNG設備自体も電動化やCCS(CO2の回収・貯留)などによって低炭素化できます。LNGは今後も現実解の一つだと思っています。

――今年度のLNG案件の受注環境をどう見ていますか。

 今年度の全社受注目標は1兆7400億円で、うち海外が1兆6000億円、国内が1400億円です。海外ではモザンビークの浮体式LNG、LNGカナダ第2期、パプアニューギニアのLNG案件などを重要な案件として見ています。もちろん、この3件だけで海外1兆6000億円を達成しようという意味ではありません。

 来年度以降も中東やインドネシアなどに案件がありますし、その先にはアフリカや南米もあるでしょう。陸上LNGだけでなく、当社が実績を持つ浮体式LNGも含めて取り組んでいきます。

――大型プロジェクトの受注を判断する際、何を最も重視していますか。

 一番重要なのは、どのリスクを自分たちが管理できるのかを見極めることです。ランプサム(一括請負)契約だからエンジニアリング会社がすべてのリスクを取る、という考え方は違うと思います。地政学リスクや、それによって発生するインフレまでコントラクターが管理することはできません。そういうリスクは取りません。それでも取ってほしいと言われれば、その仕事はやりません。

 一方、自分たちで管理できるリスクをどう見積もり、どう管理するか。それがわれわれの商売であり、利益率にもつながります。新しい仕事には挑戦したくなりますが、「血は騒ぐけど赤字を出さいようにしないと」ということです。

――近年、EPC(設計・調達・建設)を取り巻く契約環境や発注者との関係はどう変わっていますか。

LNGは日揮最大の強みである一方、一つの巨大案件で想定外のコストが膨らめば、会社全体の利益を吹き飛ばしかねない。では、世界で大型LNGプロジェクトの建設が相次ぐ今、日揮は何を基準に仕事を選び、巨額赤字をどう防ぐのか。そしてLNGとは異なる安定した収益源をどこまで育てているのか。次ページでは、佐藤CEOが「第二の収益の柱」の実力に加え、中長期の成長分野を明かす。さらに積年のライバルである千代田化工建設との連携の可能性も聞いた。