システム化できる定例業務は、主にAIに任せる。一方、人にしかできない、高度な専門性や能力を持つ人材の需要は高まることが想定される。

 いわゆるJTC、Japanese Traditional Company(伝統的な日本企業)は、新卒一括採用でジョブローテーションによりゼネラリストを育ててきた。特定の企業に就職し、長くその組織で多様な業務を行う――こうした従来型の働き方は、確実に変化していくはずだ。

AIが仕事を奪う?そう単純でもない
IBMが欲しい人材の4条件

 海外に目を転じると、AIが仕事を奪うケースは拡大している。それに伴い、必要とされる人材の要件も変化している。大手コンサルティングファームや投資銀行では、アナリストやアソシエイトと呼ばれる若手社員の採用を大幅に削減している。

 データの収集や資料作成は、基本的にAIで代替できる。というより、処理は速く正確性も高い。欧米の金融業界全体で、若手採用は最大で3分の2ほど減少したとの調査もある。

 こうした変化に関して、スタンフォード大学の研究者の分析が参考になる。それによると、AIが代替可能な職種では、22~25歳の雇用数が他の職種に比べて最大で19%低かった。その差はChatGPTの出現以降、拡大している。例えば、カナダのEC大手Shopifyは、人員を採用する前に、AIで代替可能な業務かを徹底的に検証しているという。

 一方で、興味深いポイントがある。若手の採用・雇用を削減した後で、再び採用を増やす企業も出始めていることだ。

 米IBMは2023年、顧客と実際のやり取りが発生しない約2万6000人従業員のうち、7800人(全体の約3割に相当)を5年程度でAIに置き換え可能と公表した。

 しかし今年2月、IBMは一転して若手社員の採用を拡大する方針を示した。変わったのは、職務内容=ジョブ・ディスクリプションである。数年前の若手社員の職務内容は、AIでもできることだった。現在、IBMは若手にも中途採用者にも、「部門横断で業務を推進し、意思決定を下す力」を求めている。

 プログラミングのような専門スキルはAIに任せる。逆に、人間にしかできないことを確実に実行できる人材を確保する。海外では、そうした採用戦略の修正が加速している。

 IBMは、部門横断的に事業の成長を実現できる人材の要件を4つ掲げた。

 まず、学ぶ意欲。AIの成長で世界が激変する中、常にキャッチアップする姿勢を重視している。次に、AIの回答を検証する力。原典を参照するなどして、客観的に事実を確認する能力を問い始めた。3点目は、不確実な状況下での意思決定能力。最後がコミュニケーション能力である。

 特に、新卒学生に関しては4点目を重視しているという。顧客と上司の円滑なやり取りを行うことが出来る資質を求めているのだろう。