税務署の圧倒的な話術
世間話から始まる「午前中の会話」

――実地調査の当日は、どのように相続人と会話しタンス預金の確証を得るのでしょうか。

 いきなり通帳や現金の話には入りません。まず、午前中は他愛のない世間話から入ります。家族の暮らしぶりなど世間話から入り、相手の警戒心を解きながら被相続人の性格や趣味、生活費の使い方、子や孫への贈与の有無などを丁寧に聞き取っていきます。

 威圧的な会話などはせず、緊張をほぐすような穏やかな姿勢で臨みます。しかし、発言の一つひとつから浮かび上がる違和感を決して逃しません。

 税務調査に来られた以上は、相続人も現金なんて隠していないという姿勢を貫きたい。「うちは質素でした」といった発言をされる方もいます。しかし、こうした発言はむしろ好機です。お金を使っていないなら、その分の資産がどこかに残っているはずだから。

 同時に相続人自身の資産状況や生活実態についても細かく尋ね、後で「知らない」と言い逃れできないよう、あらかじめ相続人本人の口から事実を語らせておくことが重要なポイントです。

タンス預金は「隠す」のではなく
「正しい申告」を

――なるほど、会話を重ねることで綻(ほころ)びが生じ、タンス預金の特定につながるのですね。

 事前に「おそらくこのくらいの現金が、どこかにあるはずだ」という仮説は立っている。でも、それだけでは課税できません。証拠として動かぬものにするためには、相続人自身に「知らない」と言わせない、あるいは「もらっていない」「引き出していない」と言い切らせないことが重要です。

 たとえば、通帳を見せてもらいながら、こう聞くわけです。

「毎月給料が引き出されていますが、この分は生活費として使われていたんでしょうか」

 相続人は最初、「さあ、夫のお金だったのでよくわかりません」と答えます。ここまでは想定内です。