リトラクタブルハードトップのシステムと開閉作法そのものは、SF90スパイダーと同じだ。デザインだけ変えている。他にもウィンドウシールドなどはキャリーオーバーだが、クーペとはわずかに異なるデザインとし、オープン時の空力性能をクーペと同等にまで引き上げている。

 クーペは海外(スペイン)でのテストに加えて、国内でも体験済みだ。その印象からして、また、SF90時代のクーペとスパイダーの関係から、今回のスパイダーもクーペと基本的に変わらぬパフォーマンスをみせると想像した。はたしてまったくそのとおりだった。ならば、青空を楽しめるほうが得じゃないか。たとえ600万円のエクストラコストを払っても……。

フェラーリ・849テスタロッサ・スパイダー

圧倒的パワーと緻密な制御、風と音を楽しむ桃源郷

証言/西川 淳

 特徴的な峰の裏側にある小さなカバーに人差し指から薬指までの3本を引っ掛けて、ドアを開けた。切り口が見事な流線型で惚れ惚れする。ドア開口部を見て、これほど感動することなど昔はほとんどなかった。それこそ先代のテスタロッサ以来ではなかろうか。

 マラネッロが特許を持つ一体成型技術によって製作されたドアを閉め、改めてコクピットを見渡す。デジタルインターフェイス時代になってようやく使い勝手の面で落ち着いたステアリングホイールや、マニュアルギアボックス時代のシフトゲートを模しつつ宙に浮いたように見えるギアスイッチベース、そしてその周囲のエレガントかつスポーティなインテリアアーキテクチャーを見て、最近のマラネッロは“ほしくなるインテリア”デザインに優れていると改めて思う。