枠を西から東へ無償で移転
なぜ日本は受け入れたのか
翻って今回の交渉で日本を最も苦しめたのは、米国とメキシコだった。最大の争点は東西太平洋の漁獲インパクト比率である。
7月の長崎会合では日本が現状(東18:西82)に近い比率の維持を求めたのに対し、米国とメキシコは東太平洋側の取り分拡大を要求した。特にメキシコが25:75を譲れぬ一線として主張、「1年でそこまで変更するのは受け入れられない」とする日本と激しく対立し、会議は決裂した。
ところが、8月のオンライン再開会合では妥協が成立する。
東西比率は、
・2027~2028年 20:80
・2029~2030年 21:79
・2031~2032年 22:78
へ段階的に移行することになったのである。※詳細は表を参照
さらに今回の合意では、25%までとするはずだった枠の変動制限をのっけから特例扱いとし、中西部太平洋の大型魚枠を計算上35%もの増枠とした。この結果、1187トンの追加枠が発生し、40トンをハワイ周辺で操業する米国漁船へ配分、残る1147トンに東西換算率0.66を掛けた757トンを、東側へ無償でプレゼントする仕組みが作られた。
背景には米国のスポーツフィッシング問題がある。資源回復によって米国西海岸では遊漁によるクロマグロ漁獲が急増し、近年は1000~2000トン規模に達している。※詳細は表を参照
IATTCは商業漁業だけではなく遊漁も管理対象に組み込まざるを得なくなった。遊漁も枠内で管理する日本が、米国に要求し続けていたもので、ある意味では日本のクロマグロ外交の成果ともいえる。
しかし、限られた漁獲枠に遊漁を押し込めれば、メキシコ漁業にとって打撃が大きく、折り合いがつかない。そこで、本来なら日本や韓国、台湾の漁業者が使うべき大型魚枠の一部を東側に融通することになった。
日本は米国とともに共同議長として合同作業部会の合意形成を優先したが、その過程で大幅な譲歩を余儀なくされたのである。









