赤:もちろん、設定を変えればもっと出せます。トルクも出そうと思えばもっと出る。ただ、そうすると今度は物が壊れ始めるんです。ドライブシャフトなんかも含めて、周りのハードウェアとのバランスがある。バッテリーをもっと積めば出力も上げられるし、航続距離も伸ばせます。でも当然重くなる。重くなれば足回りや車体も強化しなくちゃならない。強化すれば、また重くなる。そうやってどんどんネズミ算式に重くなっていくんです。ですから今のSuper-ONEは、そのバランスの一番良いところで造っています。
重さのネズミ算――バランスの中で選ばれた出力
95馬力は限界値ではなく、バランスの数字だった。
ひたすら馬力を上げ、巨大なバッテリーを積み、鬼のような加速と長大な航続距離を競う。それもEVのひとつの解ではあるのだろう。しかしホンダがSuper-ONEでやろうとしたのはその逆だ。軽く、小さく、人間の手の内に収める。
では、そこで赤峰さんの言う「自分たちのテイスト」、すなわち“ホンダらしさ”をどう出すのか。
F:Super-ONEはEVなのに随分エンジン車っぽいですよね。エンジン音も出るし、変速感まで演出している。せっかくのモーターなのだから、それらを全て排除して、「これこそが電気の楽しさです」とやる方法もあったと思います。エンジン車の感覚を残したのはなぜですか?
なぜEVなのにエンジン音を残したのか
赤:EVは駆動力をコントロールするという意味ではすごく優れています。一方で、「クルマの状態をドライバーが察知しにくい」という弱点があるとも思っています。音がしないので、コーナーを走っている時でも、今少し加速しているのか、減速しているのかが分かりにくい。エンジン車なら、エンジン音の変化を耳で聞きながら、無意識にアクセルを少し踏んだり戻したりしていますよね。人間は思っている以上に、音からクルマの状態を掴んでいるんです。







