自動車 解体#13Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

今から1年半前、ホンダは日産自動車を傘下に収める案を検討していた。そのホンダが今度は、“格下”と見られていた日産側の技術資産をベースに、次世代SDV(ソフトウエア定義車)の基盤を共同開発する決断を下した。なぜ経営統合交渉では圧倒的な主導権を握っていたはずのホンダが、日産の基盤に乗る側へ回ったのか。特集『自動車 解体』の#13では、両社のポジションが逆転した真相に迫る。さらに今回の共同開発は、両社によるSDV関連技術の共用化の「第一歩」に過ぎない。水面下では、その先を見据えた新たな構想も動き始めている。(ダイヤモンド社メディア編集局論説委員 浅島亮子)

次世代車の「頭脳」共通化で再接近
破談からわずか1年半で立場逆転

“世紀の統合”の破談から1年半。資本統合を見送ったホンダと日産自動車が、今度は次世代車の「頭脳」を支える技術基盤の共通化に踏み込んだ。

 8月31日、両社は次世代SDV(ソフトウエア定義車)の「中核」を構成する電子制御ユニット(ECU)と、その上で動く車載OS(基本ソフト)をはじめとするソフトウエア群を共同開発する契約を締結した。開発成果は2029年以降、両社の次世代車への搭載を目指す。

 だが、公式発表では明かされなかった重要なポイントがある。共同開発の出発点となる技術が「日産ベース」だということだ。

 関係者への取材によれば、中核ECUや車載OSなど、共同開発の土台となる既存の知的財産(IP)は日産側が保有している。ホンダが日産の既存技術を使用する場合には、その対価として日産にフィーを支払うことになる。

 もっとも、ホンダが日産の技術をそのまま採用するわけではない。契約締結後は両社による共同開発に移行し、日産の既存技術を土台に、ホンダの技術やノウハウを持ち寄り、次世代の共通基盤へ作り込んでいく。

 ここで注目したいのは、わずか1年半前の経営統合交渉における両社の力関係との「落差」だ。交渉終盤には、ホンダは自らが親会社となり、日産を子会社化する案まで提示した。日産の経営再建を確実に進めるための強硬策でもあった。日産側の反発は強く、両社は折り合えないまま、25年2月に交渉は決裂した経緯がある。

 そのホンダが今度は、SDVでは日産が蓄積した技術資産を使う決断を下した。

 なぜ、統合交渉では圧倒的な主導権を握っていたホンダが、「日産ベース」を受け入れたのか。その理由を解く鍵は、今回両社が共同開発する「中核」の正体にある。次ページでは、“日産ベース”を受け入れた「ホンダの裏事情」と、水面下で動き始めた「次の構想」を明らかにする。