それはジェニーンの次の言葉だ。
「本を読む時は、初めから終わりへと読む。経営はそれとは逆だ。終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ」
終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをする――。今日やるべき仕事は、目の前に届いた用事の中にあるとは限らない。
朝、受信箱を開けば仕事はいくらでも見つかる。返信し、会議に出て、頼まれた資料を作れば、1日はあっという間に終わる。どれも必要な作業である。問題は、その積み重ねがどこへ向かうのかを決めていないことだ。忙しさは努力の証明にはなるが、成果の証明にはならない。
目の前にある仕事から始めるか、終わりから逆算して始めるか。仕事ができる人と、できない人の差はここに表れる。
「実績こそきみの実在だ
ほかのことはどうでもいい」
同書の中で、ジェニーンが嫌ったのは、立派な理論を語りながら結果が出ない経営だった。彼は経営を、決断し、その決断が実行されるようにする仕事だと定めた。会議で承認されても、現場が動かなければ何も決まっていない。部下に指示しても、数字が変わらなければ仕事は終わっていない。
「実績のみが、きみの自信、能力、そして勇気の最良の尺度だ。実績のみが、きみ自身として成長する自由をきみに与えてくれる。/覚えておきたまえ。――実績こそきみの実在だ。ほかのことはどうでもいい。マネジャーとは“実績をもたらす人間”だと私が定義するのはこの理由による」
目標を置いただけでは、実績は出ない。逆算を現実につなぐ材料が要る。計画は事実に触れて初めて動き出す。ジェニーンが執着したのは「揺るがない事実」(unshakable facts)だった。
会社の報告には、報告者の期待や保身が混じる。「売れると思います」「予定どおりです」「大きな問題はありません」。こうした言葉が組織の階層を上がるたび、悪い知らせは薄まり、経営者に届く頃には安心できる物語へと変わる。
ジェニーンが見ていたのは
「計画と現実のずれ」
ジェニーンは約250の事業部門から月次報告を直接送らせ、組織図の階層を飛び越えた。ある月に読んだ報告書は146本、計2537ページに達した。
問題点や異常な点は、報告書の1ページ目に設けた「赤旗欄」へ書かせた。問題を最初に知らせる早期警告欄である。末尾にそっと書き込んで「報告済み」と逃げるような余地を与えなかった。
米国と欧州で開かれた月次会議には、100人を超える幹部が集まった。会議は何日も続き、朝から夜まで数字を問い直した。
誰がこの数字を出したのか。どんな前提を置いたのか。計画との差はなぜ生じたのか。いつ問題を知ったのか。ジェニーンは、紙に印刷された数字を事実として受け取らず、数字が示す現場の動きまで確かめた。
146本、2537ページという数字を見て、勤勉な経営者だったと片づけると肝心な点を落とす。ジェニーンが読んでいたのは報告書そのものより、計画と現実のずれだった。
数字が合わない場所には、売れない商品、遅れた判断、隠された問題がある。彼はそこへ質問を重ね、責任者が答えを用意していない時には、その場で現実を直視させた。月次会議は情報共有の場ではなく、未達を行動へ変える装置だった。







