「こんな数字で俺に恥をかかせる気か!」
「はらわたが煮えくりかえっている!」

 業界最大手の日本M&Aセンターでは2022年3月期まで、四半期ごとの目標の達成率を、営業部門の部長ら約30人を集めた定例の部長会議で報告させ、進捗状況を管理していた。

 会議では、部長が一人ひとり前に出て、三宅卓会長(当時は社長)ら首脳陣の前で達成率を発表し、進行中の案件や見込み数字などを報告する。

 その際、目標が未達成だった部長の場合、三宅会長や竹内直樹社長(当時は常務取締役)らから、他の部長が居並ぶ前で厳しい叱責を浴びせられていたという。

 実際に会議に出席していた元部長らによると、会議では次のような言葉が、強い口調で発せられていた。

「なんとかしろ!」

「目標に達していない分は誰が埋めるんだ!」

「こんな数字で俺に恥をかかせる気か!」

 会議に出席していた別の元部長はこう話す。

「目標を達成できていれば発表はすぐに終わるんですが、未達成だとずっと前に立たされて、ひたすら詰められます。私が覚えているのは『こんな成績を聞いて、はらわたが煮えくりかえっている!』という言葉ですね。(目標が)未達の部長にとっては、地獄の会議でした」

日本M&Aセンター三宅会長を直撃
「言葉尻で私も過激なところはあります」

 2023年1月、三宅氏に直接取材を試みた。

――取材では以前の部長会議で、三宅社長や竹内取締役から「なんとかしろ!」「目標に達していない部分は誰が埋めるんだ!」「こんな数字で俺に恥をかかせる気か!」「こんな成績を聞いて、はらわたが煮えくりかえっている!」という言葉が毎回のようにあったという証言があります。

「そんなことは言っていないと思いますよ。(会議では)業績に対して、楽観的に見るとどのくらいか、悲観的に見るとどのくらいの額で着地しそうかを示してもらう。強く詰めるというか、そういうことは、部長会議ではやらないようにしています」

――言っていないんですか。

「いや、言葉尻としては言ったかもしれません、勢いで。でも、部長会議では一つひとつの案件の日程が出てきて、詰めていっています。“なんとかしろ”とか、そんなアナログな議論をするほど、私は馬鹿じゃないです。ただ、言葉尻で私も過激なところはあります。基本、営業マンなので。営業同士として、言ったことがあるかもしれません。何十年と一緒に仕事をやってきた人もいますから。義兄弟のようにね。信頼関係がある人には言ったかもしれませんが、腹の底から言っているとか、そういうことではないと思います。それがない人に言っていたら、それパワハラですから。でも、今年はしていません。基本、うちはちゃんとした会社ですし、私もちゃんとしたビジネスマンです。そんな発言をしてしまえば、みんなに馬鹿にされてしまいます」

「基本、うちはちゃんとした会社です」――わざわざそう断らなければならないところに、この業界の難しさがあるのかもしれない。

(※本稿は片田江康男記者の新刊『社喰い』(ダイヤモンド社)を抜粋・編集した記事です)

片田江康男(かたたえ・やすお)
記者。1979年東京都生まれ。2003年ダイヤモンド社に入社。2006年より『週刊ダイヤモンド』記者。これまで取材したテーマは東日本大震災後の東京電力問題や、大手生命保険会社における金銭詐取問題など。2021年からM&A業界を取材。M&Aのダークサイドに踏み込んだ『社喰い』(ダイヤモンド社刊)が好評発売中。

Key Visual by Kaoru Kurata, Manami Kanemura