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経営者保証が外れない、買収直後に会社の資金を吸い上げられる――。2024年以降、相次ぐM&Aトラブルの報道を受け、国はガイドラインを改定し、業界団体である「M&A支援機関協会」も問題のある買い手の情報共有など対策を進めてきた。では、同じようなトラブルはもう起きないのか。新刊『社喰い』(ダイヤモンド社刊)でM&A仲介会社の内情を取材した片田江康男記者と、『ルポ M&A仲介の罠』(朝日新聞出版刊)の著者で、トラブルに遭った企業の声を拾い上げてきた朝日新聞社の藤田知也記者が、対策が進んだ今も残るM&A仲介業界の構造的な問題を語った。(取材・構成/ダイヤモンド社書籍編集局 工藤佳子)
「経営者保証が外れない」「資金を引き抜く」…
M&Aトラブルがなくならないワケ
――お二人が取材されていたようなM&Aに関するトラブルは、どうすればなくなるのでしょうか。
藤田知也(以下、藤田):悪い人がいたら取り締まればいい、という話ではないですよね。個人間で勝手に会社を売買する状況なら、いろんなトラブルが頻発するのもある意味しょうがない。でも、今起きているのは、「仲介ビジネス」を介した会社の売買でのトラブルです。不動産売買だって、不動産を渡したのに代金が入ってこない、みたいなことが頻繁に起きていたら社会は困りますよね。だから、そういうことが起きないように、仲介業者によって取引がきちんと完了するための法律やルールが整っている。M&Aも本来は同じで、トラブルをなくすには、間に立つ仲介業者に「トラブルが起きないような仕事」をさせないといけない。突き詰めれば、そこだと思います。
――具体的に、どのようなことがトラブルとして起きていたのでしょうか。
藤田:2024年に僕が取り上げたトラブルのポイントは、二つあったと思っています。
一つが、売り手である元社長が負っていた「経営者保証」が外れないという問題です。もう一つが、買い手側企業が買収した直後に売り手側の会社からお金を抜いていくという問題です。これは、「朝日新聞」の連載で言うと第3弾以降ですね。
朝日新聞の特集では、割と早い段階で「経営者保証を確実に外すにはどうすればいいのか」という対策がかなりクリアになった。一方で、「資金を吸い上げられて会社がつぶれる」という事象をどう考えたらいいのか。これは取材後半の大きなテーマになりました。
片田江康男(以下、片田江):私は、トラブルってなくならないのではないかと思うんですよね。中小企業庁がM&A仲介を行う個人を対象にした国家資格制度導入の方針を示していて、これからいろいろ進んでいくんでしょうけど、それでもしばらくはトラブルがあり続けるんじゃないかと思います。
『社喰い』の中でも触れましたが、一つには仲介会社の構造的な問題があります。やっぱり契約が成立したときに担当者個人へ支払われるインセンティブ報酬制度の存在が大きい。今の報酬制度や体質が変わらない限り、買い手が悪質であろうがなかろうが、とにかく会社をくっつけて、成約させようとする力が働く。
一方で、売り手企業のオーナーにも「経営からエグジットしたい」という思いがある。そして買い手側には、「できるだけ安く買って、会社からお金を引き抜きたい」という意図を持つ人もいる。
仲介会社、売り手、買い手。この三つの要素がある限り、同じようなトラブルはなかなかなくならないと思います。そして被害を受けるのは、売り手企業の従業員やその家族、取引先や債権者だったりする。その中でも、やっぱり仲介会社の問題は大きいと思います。こういうトラブルを生む原因の一つになっている。







