社喰いPhoto by Yasuo Katatae

2021年から全国で30社近い中小企業を買収し、その多くでトラブルを引き起こしたルシアンホールディングス。23年12月末、事業を放り投げて行方が分からなくなっていた代表者が、筆者に対して初めて、一連の経緯について証言した。「中小M&Aガイドライン」の改訂や、M&A仲介業などに対する規制強化のきっかけをつくった代表者は、今何を考えているのか。新刊『社喰い』(ダイヤモンド社)の内容を再編集し、お届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

M&Aトラブルを引き起こした
ルシアンHD代表者が初の証言

 2021年11月に設立されたルシアンホールディングス(HD)は、23年12月までの約2年間で、結婚式場の運営会社や建設・土木会社、中古車販売会社など30社近い中小企業を買収した。ところが、買収した中小企業との間でトラブルが続出。悪質な買い手企業の筆頭として、その手口に注目が集まった。

 ルシアンHDは中小企業を買収して子会社化した後、その会社の現金を親会社で一括管理する名目で吸い上げる。現金が戻されることもあったが、資金不足に陥る子会社が相次いだ。中には取引先への支払いや金融機関への借入金返済ができなくなり、倒産状態に追い込まれた企業もあった。

 トラブルの中でも特に問題視されたのは、ルシアンHDに会社を売却した元オーナーが負っていた経営者保証が、外されないまま放置されたケースだった。

 中小企業の現場では、自社が金融機関から借り入れた債務に対して、経営者が保証を負うことが多い。経営者保証ともいわれ、M&Aで会社を売却した後に、保証は外されなければならない。それはM&Aの際に締結する株式譲渡契約書に明記されていることも多い。それにもかかわらず経営者保証が外されなかった元オーナーは、事業を手放したものの保証だけ負わされる状況になっていた。

 24年5月ごろにトラブルが報道されたことで、中小企業庁が作成した「中小M&Aガイドライン」の改訂や、M&A仲介業に対する規制強化が進められた。ところが、23年12月からルシアンHDの代表者は失踪しており、30社近い中小企業を買収した狙いなどは分からずじまいだった。

 そんな中で筆者は、ルシアンHD代表者に接触。トラブル発覚後に失踪してから初めて、代表者の証言を得ることができた。どのような狙いがあったのか。買収した子会社とトラブルを引き起こし、元オーナーや従業員ら関係者を窮地に追い込んだことについて、どう考えているのか。次ページで、『社喰い』(ダイヤモンド社)に掲載した、ルシアンHD代表者の証言部分を、再編集してお届けする。