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M&Aで会社を買収し、現預金を引き抜き、元社長が負っていた連帯保証も外さず、カネと共に姿をくらます――。M&Aでのトラブルは後を絶たない。さらに、問題のある買い手企業として注目されたルシアンホールディングスの代表者が、積水ハウスが巻き込まれた東京・五反田の「地面師事件」のすぐ近くにいた人物だったことも明らかになった。新刊『社喰い』(ダイヤモンド社刊)を上梓した片田江康男記者と、『ルポ M&A仲介の罠』の著者で朝日新聞社の藤田知也記者が、取材で見えてきた「罪に問う難しさ」を語る。(取材・構成/ダイヤモンド社書籍編集局 工藤佳子)
まるで「会社版地面師」
世間を震撼させた事件との接点
――30社以上を買収し、問題のある買い手企業として話題となった「ルシアン事件」の報道が一段落した今年、ルシアンホールディングス(HD)の代表取締役H氏が、過去に東京・五反田の地面師事件に登場していた人物だったことが森功さんの『地面師vs.地面師』(講談社刊)で明らかになり、衝撃が走りました。
藤田知也(以下、藤田):衝撃でしたね。ノンフィクションライターの高橋ユキさんから「H氏のこと、知っていますか」と問い合わせがあったんです。森功さんの本がまだ発売前だったので、「えっ?」となって。そこで初めて知りました。
――『ルポ M&A仲介の罠』では同じくルシアンHDの中心人物とされていた取締役のK氏を取材していましたね。どんな印象でしたか。
藤田:(H氏とK氏の)2人とも複雑な背景があるとは思いました。ただ、彼らが周囲に語っていることのどこまでが本当なのか、最後まで確信が持てなかったんですよね。「彼らがそう語った」という事実はある。でも、その証言を基に「彼らはこういう人物だ」と掘り下げていくのは、かなり骨の折れる作業だと思いました。
――片田江記者は『社喰い』の取材で、ルシアンHDの中心人物とされていた取締役のK氏だけでなく、これまでメディアに一切出ていなかった代表取締役のH氏とも接触していました。彼はどんな印象でしたか。
片田江康男(以下、片田江):私も藤田さんとまったく同じことを感じました。どこまでいっても本当のことが分からないし、彼らが言っていることをどこまで信用していいのかも分からない。裏付けを取るのも非常に難しい。
運よくルシアンHD代表取締役のH氏に接触することができたのですが、地面師事件で「だます側」だったのか、それとも買い手として「だまされる側」になりかけていたのか、それすら分からないんですよね。当然、H氏自身は「自分はだまそうとしていた側ではない」という立場で私に話をしていました。でも、本人が話している内容だけでは判断できないと感じています。
ただ、五反田で起きた地面師事件のすごく近いところに彼がいたことは間違いないと思います。H氏は、事件関係者の名前を出して、「知っている」と話していました。不動産ブローカーにも知り合いがたくさんいる。「自分は不動産の世界で生きてきた」という趣旨のことを本人も言っていました。だから、事件のすぐ近く、感覚としては「隣」にいたような距離感だったんじゃないかと思います。







