「相互依存宣言」が示すBコープ活動の原点
サミット最終日の基調講演に立ったのは、B Labの共同創業者、バート・ホウラハン氏でした。数百人が集まった会場の壇上で、氏は静かに切り出しました。「昨日、アンドリューの一周忌でした」。

アンドリューというのは、ホウラハン氏の大学時代からの友人であり、B Labの共同創業者のアンドリュー・カッソイ氏のこと。そのカッソイ氏が25年6月22日、がんでこの世を去ったのです。ホウラハン氏は会場に黙とうを促し、「ここにこうして皆さんが集まってくれた。それが彼の生きた証しです」と語った後、こんな言葉を続けました。
「やるべきこと(What)は圧倒的に多く、実践(How)は困難ですが、そんなときこそ、なぜ私たちが力を合わせているのか(Why)を思い出すことがとても大切です」
カッソイ氏は、Bコープ活動の核に「ケア(care)」という概念を置いていました。ホウラハン氏は、その対極にあるものをこう説明します。
「従来の資本主義は『ケアレスネス(Carelessness)』の上に築かれている。うっかりグラスを落とすといった意味での『不注意』ではありません。他者に対する意図的な『無配慮』という意味でのケアレスネスです」
他者に対する無配慮の上に築かれてきた従来の資本主義を、ケアを基軸とした資本主義へと変えていく。そのためには、何を「ビジネスの成功」とするのか、その指標や物語そのものを書き換えていかねばならない。この20年間のBコープのムーブメントは、こうした理念に共感した個人や企業が互いを動かし、大きなうねりをつくってきた軌跡です。
そして、その思想の出発点に置かれたのが、B Labの創業者たちが最初に書いた「相互依存宣言(Declaration of Interdependence)」でした。実質的なパーパスといえるこの文書には、私たちは互いに依存し合っているからこそ、互いに対して、そして未来の世代に対して責任を負うのだという考えが記されています。
B Corp Brand Book(https://brand.bcorp.com)より拡大画像表示
一般に企業のパーパスでは、「自社は何者か」「他社と何が違うのか」が語られます。そこには、自社の輪郭を明確にし、差別化によって競争優位を築こうとする発想が見える。いわば会社の「独立宣言」なのです。B Labが掲げた「相互依存宣言」とは対照的です。
自社の存在を、他社との違いからではなく、他社とのつながりから捉え直す。この「相互依存」という視点はパーパスを機能させるための重要な補助線になるのではないか──。この視点から、日本からサミットに登壇した4社の取り組みを振り返ってみたいと思います。それぞれ事業内容は異なりますが、いずれも、理念を「掲げる」だけでなく、日々の経営の中で「機能させる」ことに力を注いでいる企業です。







