期間限定を買うか買わないかの判断も同様に、将来と現在の比較の問題なのです。これには、画一的な解決法はありません。適度に今を楽しんで、適度に将来への備えをしておく、バランスが大事になります。

 だから、今を楽しむために、期間限定を買うのもアリなのです。

後悔は次の選択を
成功させるためにある

 後悔は、過去の選択を気にする心理です。「よくない状態になったのは、自分の選択が失敗だったからだ」と思っての反省です。

 そうすれば、次に同じような状況に出会ったときによりうまく選択できるので、「後悔する傾向」が遺伝子には組み込まれているのです。

 動物にも後悔に似た行動が見られます。ネズミが餌場に近づくと、五分五分の確率で電気が流れ、ネズミに電気ショックが加わる実験をします。

 ネズミは餌を食べたくて餌場に行きますが、ときどき電気ショックが加わるので、餌場に近づくのを躊躇するようになります。しかし、空腹になると近づいてしまい、そのときに運悪く電気ショックが加わると、「やってしまった」という行動を見せます。

 人間の後悔は動物より複雑です。動物よりも過去の体験をたくさん覚えられるからです。

 祖先の時代、狩猟採集の失敗を後悔して、成功率が上がりました(注2)。後悔した結果、獲物の行動パターンや、木の実が熟す時期を習得でき、食べ物が豊富に手に入るようになったのです。

 このように、後悔すると行動の成功率が上がるので、本来後悔はいいことなのです。

 いいことのはずなのに、なぜ後悔すると“嫌な感じ”がするのでしょうか。それは、嫌な感じのほうが過去の体験を覚えていられるからです。

 人間も動物もふだんは忘れやすいものですが、恐怖や怒りなどで興奮しているときには、脳からノルアドレナリンという神経伝達物質が分泌され、その作用で記憶力が上がるのです(注3)。

複雑な現代では後悔が
役立たないこともある

 というわけで、多少の嫌な感じはがまんして後悔したほうがよさそうです。ところが現代社会では、遺伝子の想定を超えた事態が発生しています。

『科学が解明した 悩んでもしょうがないことリスト』書影『科学が解明した 悩んでもしょうがないことリスト』(石川幹人、サンマーク出版)

 狩猟採集時代の単純な生活に比べて、飛躍的に複雑さが増しているのです。たとえば、転職して仕事の内容も人間関係も変わってしまったら、過去の職場体験が役に立たないですよね。

 そのうえ、新しい技術や社会制度が確立されて、経験の種類ががらっと変わってしまうという事態もよくあります。

 そもそもパターン化できない事態にも直面します。たとえば、株価急落が見抜けなかったことを反省しても、次の急落を感知することはほとんどできません。

 遺伝子としては後悔するけど、社会としては後悔してもしょうがないのです。もう、後悔を気にせずにやり過ごすしかありませんね。「それでもやり過ごせない」という方も、それすらしょうがないのです。

注2 こうした体験の規則性を習得することから科学技術の発展がもたらされました。

注3 過去に災難にあった人が、その後も頻繁にその記憶がよみがえってパニックに陥る症状(PTSD)の原因でもあります。