1つ目、価値が目減りする。お金の価値はいま受け取るのがいちばん高い。結婚、出産、子育て、マイホームにマイカー。お金がいる場面は、老後より現役時代に集中しているからだ。その入り用の時期に受け取れないまま、何十年も会社に預けっぱなし。しかも利子は1円もつかない。物価が上がったからといって、退職金が連動して増える仕組みもない。それどころか大卒の平均退職金はこの15年で400万円以上も減っている。価値の目減りを黙って受け入れるしかない。それが退職金制度の実態だ。

 2つ目、満額受け取れる保証がない。終身雇用は崩壊した。あなたが定年まで会社にいられる保証も、その会社が定年まで無事に存続する保証もない。業績が傾けば退職金の減額もありうる。倒産すれば減額どころではなく消滅する。あなたがいくら騒いだところで無い袖は振れない。泣き寝入りするしかないのだ。

 3つ目、税制優遇がなくなる。退職金にかかる税金には、長く勤めた人ほど安くなる優遇制度がある。国としても退職金という制度をバックアップしていたのだ。利子はつかないが、税金は減らしてくれる。ここが退職金の唯一のメリットとも言えた。ところが政府はこの税制優遇を見直そうとしている。退職金の存在が転職をさまたげ、雇用の流動性を下げているからだ。現役世代のあなたが実際に退職金をもらうとき、この優遇制度が残っている保証はどこにもない。まだ検討や見直しを進めるといった段階だが、わたしは優遇廃止は時間の問題だと睨んでいる。

 4つ目、身代金になる。長く勤めるほど退職金は増える。しかも、勤続年数を重ねるにつれて増え方も大きくなる。だから途中で辞めてしまうと、そのぶんのお金を失うはめになる。そう。退職金はあなたを会社にしばる身代金なのだ。魅力的な転職のオファーがあっても決心がつかない。夢に抱いていた仕事に就くチャンスが訪れてもためらってしまう。

 少し前に「嫁ブロック」という言葉も流行った。あなたの転職を快く後押ししてくれるパートナーはどれほどいるだろうか。もちろん、すでに何十年も勤めていて、あと数年で大きな退職金がもらえるならわざわざ捨てる必要はない。もらえるものはもらえばいい。損得を計算して会社に残るなら、それも立派な選択だ。