でも「退職金が減るから」という理由だけでもっと稼げる転職や、やりたい仕事をあきらめるのはバカげている。見るべきなのは退職金の額ではない。これから先、生涯でいくら稼げるかだ。転職で年収が上がるなら、退職金の目減りぶんなど数年で取り戻せることもある。新しい経験、人脈、稼ぐ力は、そのあともずっと積み上がっていく。退職金はごほうびではない。ましてや、会社に人生を預ける理由でもない。もらえるものはもらえ。でも退職金のために人生を売るな。

人脈はお金よりも
「利回りの高い資本」になる

 仕事も、お金も、情報も、チャンスも、すべて「人」が運んでくる。採用の場面を考えてみればいい。求人サイトから応募してきた見ず知らずの人と、社員の紹介で応募してきた人。どちらが有利かは誰でもわかるだろう。

 投資話でも案件でも、おいしい話ほど公開されるまえに人づてで動くのだ。そうした人とのつながりのことを「社会関係資本」と呼ぶ。株や投資信託が「金融資本」、あなた自身の稼ぐ力が「人的資本」。人とのつながりはそれに続く第3の資本であり、わたしは3つのなかでこの社会関係資本の利回りがいちばん高いと思っている。

 ただし社会関係資本はお金で直接は買えない。いちばん確実な増やし方はギブだ。奢る。紹介する。手を貸す。祝う。惜しみなく教える。先に与えたぶんだけ、この資本は増えていく。なぜ先に与えると増えるのか。貸し借りの力学で、貸し手が圧倒的に有利だからである。わたしのまわりも成功者ほど、貸し借りには異常なほど敏感だ。奢られたらすぐ奢り返す。会う予定が合わなければ、贈り物で返す。世話になったら倍にして返す。彼らは借りを放置することがもっとも高くつくと知っているのである。

数千円の飯代で
「信用できる人」を見抜ける

 借りを負ったままの相手には強く出られない。頼まれごとも断りにくくなり、交渉でも譲歩を迫られる。返すまでのあいだ、目に見えない利子が膨らみ続ける。人間関係にも目には見えない貸し借りがある。誰に世話になったか、誰に助けてもらったかは、あんがい忘れないものだ。だから先にギブしておくことには意味がある。いざというとき、その積み重ねが信用として返ってくる。