有賀氏は自ら中国の工場へ足を運んで話し合い、工場の最終工程で行っていたサンプリング検査を全量検品に変えたという。有賀氏の回想では、2カ月後に品質クレームがなくなった。

 生産部門が怒られていた理由のもう一つが納期遅れだった。服を店頭に出す約10日前には倉庫へ納める必要があった。生産部門は、この倉庫への納入日を守る責任を負っていた。だが当時、期限どおりに納める割合は約70%で、生産部門が叱られていた。

 だが中国の工場に赴いて理由を聞くと、事情が違った。材料をそろえて作業を始めるには、本社の企画部門が服の仕様を決めて、工場に発注する必要がある。その発注が遅れていたのだ。本社からの発注が遅れた分、後の工程にしわ寄せが来る。

 そこで有賀氏らは、予定日までにどれだけ本社からの発注がきたかを毎月の部長会で報告し、会社全体で改善に取り組んだ。3カ月後、予定どおりに発注される割合は95%まで上がった。当然、倉庫への納期達成率も95%になったという。

 有賀氏は、優秀な社員たちが問題を解決できなかった理由を「職場が暗かったから」と考えた。会話の少ない職場では、知恵を出し合うチームワークが生まれにくいと振り返る。

「何度も電話で指示を出している」
部下の言い訳をピシャリ

 ここで、柳井氏自身が別の時期に示した「問題解決」の考え方にも目を向けたい。

 著書『経営者になるためのノート』に紹介されているエピソードで、有賀氏の回想とは別の時期の話だ。

 ユニクロがフリースに挑戦し始めた頃、粗雑な製品しかできあがってこなかったと言う。柳井氏は担当者に理由を尋ねた。担当者は、中国の工場には何度も電話で指示を出していると説明した。

 柳井氏はこれに対して、工場はパートナーなのだから、現地へ行き、実物を前にして一緒に解決するよう求めたと言う。指示をしても、相手の仕事がそのとおりに進むとは限らない。担当者自身が現地に入り、どこで困っているのかを確かめる。柳井氏は、発注する側にも解決の手間を求めていた。

 さらに柳井氏は「実際に中国に行ってみると、当時の状況下ですと、工場の作業者側は『自分たちはまじめにやっている。どうして、そんな指示を受けなければいけないのですか』という考え方であることが分かりました」としている。

 柳井氏も有賀氏も、現場で原因を確かめ、解決につなげようとする姿勢は共通している。ただし、現場の力を引き出すには、厳しさだけでなく、社員が萎縮せず知恵を出し合える環境も欠かせないと言えるだろう。