実験では、スヌーズの時間があることで、「徐波睡眠」と呼ばれる、ひと晩のうちでいちばん深い眠りの途中からいきなり引き上げられることが防がれていました。何度か鳴るアラームが、深い眠りから浅い眠りへ移るための助走路になっていた、と考えるとわかりやすいでしょう。スンデリンらも、短いスヌーズは夜型の人の寝起きのぼんやりを和らげる助けになるかもしれないと述べています。
ですから、スヌーズと縁が切れない自分に、今日からはがっかりしないであげてください。使うと決めたら、起きたい時刻から逆算して最初のアラームを設定し、鳴るたびに寝返りを打つなり伸びをするなりして、少しずつ体を起こしていきます。早番や大事な会議の朝だけはアラームを枕元から離すなどの使い分けをしてもいいでしょう。
通勤時間は仕事への
「切り替え時間」になる
朝の満員電車に揺られていると、この時間はいったい何なのだろうと思うことはないでしょうか。家を出てから会社に着くまでの数十分は、仕事でも休息でもないただ削られるだけの時間。そう感じている人は少なくないでしょう。
しかも通勤は、ほぼ毎日やってきますし、在宅勤務を経験したことがある人ならなおさらです。ただ、在宅勤務で家の食卓からいきなり仕事に飛び込む朝は、どこか調子が出ないと感じたりもします。
ハーバード・ビジネス・スクールのヤヒモヴィッツらは、通勤を「『家庭での自分』から『仕事での自分』へと役割を切り替えるための通路」と捉えました。そして、イギリスのメディア企業で働く225人、中南米の金融サービス企業で働く1068人への調査、443人が参加した4週間の介入実験と、合計1736人を対象に検証を重ねています。
この研究からわかったことは2つあります。まず、通勤時間が長い人ほど仕事への満足感が低く、離職にもつながりやすいこと。この悪影響は、がまんがあまり得意でない人や、仕事と家庭の板挟みが強い人ほど大きくなっていました。
そしてもうひとつは前向きな結果です。通勤中に、今日の仕事で自分は何をするのか、どんな役割を果たすのかを思い描いている人は、長い通勤の悪影響を受けにくかったのです。ヤヒモヴィッツらはこれを「役割を明確にする見通し立て」と呼びました。移動しながら頭の中で今日の自分に着替えておく、ということです。
『悩まない人の習慣』(堀田秀吾、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
通勤は、劇場でいえば楽屋にあたる時間なのかもしれません。俳優は舞台に出る前に、楽屋で衣装を替え、役の気持ちをつくります。家から直接舞台へ上がる俳優がいないように、私たちにも、「家庭の自分」から「仕事の自分」へ切り替わるための場所が必要です。
同じ通勤時間であっても、それをただの移動として過ごすか、気持ちを作るための時間として使うかで、職場に着いたあとの動きが変わってきます。
逆に帰り道は、仕事の自分を脱いで家の自分に戻る時間にあてられます。改札を出たら仕事のことは考えない。そう決めるだけでも、家に持ち込むモヤモヤは減ります。
毎朝同じ道順や同じ音楽と組み合わせれば、切り替えの合図はいっそう確かになります。







