仕事のできる人ほど、『育ちがいい人(R)※』ほど、公私の境界を明確に使い分けます。「それはちょっと……」と曖昧に濁すよりも、毅然と伝えるほうが意外にもスムーズにいくものです。曖昧な返答は相手に期待を持たせたりと、かえって関係をぎこちなくさせてしまうでしょう。明確に伝えることは、誠実さの表れでもあるのです。
※『育ちがいい人(R)』は諏内えみ登録商標
断り文句一つで
相手の印象も変わる
相手の期待に沿えない場面において「お断り」のひと言が持つ影響力は計り知れません。
「ムリです」。この言葉は口にした瞬間、相手の提案や相談をいきなり遮断してしまう冷たさがあります。相手に寄り添う姿勢を完全に欠いたこの言い方は、信頼関係にヒビを入れてしまいかねません。
大人として選びたいのは、「尽力いたしますが、現状では難しいかと存じます」「何とかご希望に沿いたいところですが、今回はお引き受けが困難な状況でございます」――そして状況によって「条件が整えば再検討いたします」と添える表現です。これは単なる「NO」の言い換えではありません。相手の願いをいったん受け止めた上で、現在の状況では実現へのハードルが高い、という「配慮の言葉」です。
『大人がしている 気くばりのある話し方』(諏内えみ、明日香出版社)
「難しい」という表現には、「あなたの要望を一度自分の中に受け入れ、何とかできないかと試行錯誤した」という検討のプロセスが滲み、「本当は力になりたいのだが」という誠意が自然と伝わります。受け取る側にも「自分の提案を無下にされたわけではない」と感じていただけるのです。
なお、「かと存じます」という語尾も見逃せません。「難しいです」と言い切るのではなく、決定事項を突きつけることを避け、相手の事情を汲み取ろうとする寄り添いの姿勢が表れます。
さらに、「代わりの案として……」と代替の提案を添えることができれば、断りの言葉が一転して「ともに考える姿勢」の表れになります。扉を閉じながらも、別の扉を開けてあげる。そんな心づかいこそが、お断りの場面においてもなお、相手との縁を繋ぎ留めます。
“ムリ”はゼロ。“難しい”は事情を含みます。「ムリです」と切り捨てるか。「難しいかと存じます」と寄り添うか。この些細な違いが、相手の心に残る印象を大きく左右します。







