富裕層必見!資産防衛&節税術Photo:PIXTA

中小企業の相続税節税対策の一つである「非上場株式」評価の圧縮策。実は国税庁がその評価方法の大幅見直しを進めており、数ある節税スキームは軒並みふさがれる可能性が高まっている。これまで節税対策を行ってきた中小企業経営者にも影響が大きそうだ。連載『富裕層必見!資産防衛&節税術』の第44回では、税理士が詳細を解説する。(税理士 吉澤 大)

非上場株式評価方法が60年ぶり変更に
中小企業の相続税節税対策に影響は必至

 国税庁は非上場株式の評価方法について、1964年の財産評価基本通達制定以来続いてきた基本的な評価体系を抜本的に見直すことを検討している。

 まだその詳細は詰められてはいないが、これまでの有識者会議の議論を通じて見えてくるのは、会計検査院からも指摘されていた評価の不合理な部分が修正されるということである。さらに言えば、税法で想定していない盲点を突くような方法を取ることで、その相続税の負担を引き下げるような、合法ではあるがアンフェアな「租税回避行為」が封じ込められることであるともいえる。

 現行の非上場株式の評価方法は二つある。まず「類似業種比準方式」という、同業種の上場企業の株価をベースにし、その配当の額や利益水準、純資産額から、非上場株式の評価額を定める計算方式。そして「純資産価額方式」という、資産の時価から負債を差し引いた金額をベースにする計算方式だ。この二つを会社規模(従業員数、総資産、売上高により「大会社」「中会社」「小会社」に分類される)に応じて使い分けたり組み合わせたりする。

 会社といえども個人事業に近い小規模な「小会社」は、その会社の価値が保有する財産の価値に依存する部分が大きいとして純資産価額方式が用いられることが多い。一方規模が大きい「大会社」は、業績に依存する部分が大きいとして類似業種比準方式が使われることが多くなるのだ。

 この類似業種比準方式は、一時的な巨額損失を意図的につくれば評価株式の株価を大きく引き下げることができるという問題があった。例えば、航空機のオペレーティングリースのように初年度に多額の償却費を計上できる節税商品や、オーナー社長に多額の退職金を支給するといった行為がそれに当たる。

 これらのスキームは、当初は多額の償却費により法人税負担が軽減されるが、売却時には、その売却益にまとめての法人税がかかるため、法人での税負担軽減効果はほとんど見込めない。しかし、相続税については節税効果がある。一時的にでもその会社に巨額の損失が計上されることで、自社株の評価額を引き下げることが可能になるからだ。これまで税理士から、これらの自社株評価引き下げ策を提案されてきた経営者も多いだろう。

 今回の見直し案では、こうした節税策にメスが入ることになりそうだ。具体的にはどうなるのか。次ページから詳しく見ていこう。