富裕層必見!資産防衛&節税術Photo:PIXTA

会社を経営し、自社の株式(自社株)を保有するオーナー経営者や、その株式をいずれ相続する立場の人々を直撃する、重大なニュースが飛び込んできた。国税庁が、取引相場のない株式(非上場株式)の相続税評価の仕組みを62年ぶりに抜本的に見直す新方式のたたき台を示したのだ。同案は早ければ再来年2028年1月からの相続・贈与に適用される見通しだ。自社株の評価額は事業承継における相続税・贈与税の負担だけでなく、M&Aの参考価格としても機能し、ひいては会社の存続を左右する。連載『富裕層必見!資産防衛&節税術』の第39回では、非上場会社のオーナーを直撃する新方式の仕組みと、資産防衛のための対策を指南する。(税理士法人チェスター東京本店代表 河合 厚)

従来制度の穴を活用した節税スキームもNGに?
62年間も不変だった相続税評価が一変へ

 会社を経営し、自社の株式(自社株)を保有しているオーナー経営者や、その株式をいずれ相続する立場にある方にとって、重大なニュースが飛び込んできた。

 国税庁が、取引相場のない株式(非上場株式)の相続税評価の仕組みを62年ぶりに抜本的に見直す新方式のたたき台を示したのだ。同案は2026年8月20日に開催された「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」(第5回)で提示されたもので、早ければ27(令和9)年度税制改正大綱に盛り込まれ、28年1月からの相続・贈与に適用される見通しだ。

 自社株の評価額は、事業承継における相続税・贈与税の負担だけでなく、M&Aの参考価格としても機能し、ひいては会社の存続そのものを左右する。「うちの会社は上場していないから関係ない」という話ではない。非上場会社のオーナーにこそ直撃するテーマである。本稿では、新方式の仕組みと、資産防衛の観点から今からできる備えを解説しよう。

 非上場株式の相続税評価は、これまで会社の規模によって方式を使い分けてきた。大会社は上場している類似業種の株価を参考にする「類似業種比準方式」、小会社は相続税評価額に引き直した純資産をベースとする「純資産価額方式」、中会社はその併用――という枠組みが、1964年の制度創設以来、基本的に維持されてきた。

 この枠組みには長年、制度上の課題が指摘されてきた。会計検査院は、規模の異なる評価会社の間で評価の公平性が確保されているとはいえないと分析し、無配当の会社が多いにもかかわらず配当を比準要素としている点や、配当還元方式の還元率10%が現在の社会経済状況を反映していない可能性にも触れている。国税庁も、あえて会社規模を操作したり、無議決権株式を使って配当還元方式を適用させたりすることで評価額を大きく圧縮するスキームの存在を問題視してきた。

 有識者会議の資料では、こうした手法によって評価額が圧縮された具体例が8類型にわたって示されている。子会社の会社規模を操作して評価方式を切り替え、評価額を約100億円(税額ベースで約55億円)圧縮したケース。子会社からの循環貸し付けによって親会社株式の評価額を約65億円(同約35億円)圧縮したケース。無議決権株式を用いて配当還元方式が適用される株主をつくり出し、約19億円(同約10億円)圧縮したケース。オペレーティングリースを活用した圧縮や、株主構成の操作によって全株式を配当還元方式で評価し約98%の圧縮を実現した例も含まれる。上場企業のオーナー経営者や資産家が、資産管理会社を通じてこうした高度なスキームを利用してきた実態も指摘されている。

 このような評価額圧縮スキームが横行してきた背景には、評価方式間の乖離という構造上の問題がある。国税当局からすると、個別の事案ごとに財産評価基本通達総則6項(「伝家の宝刀」と呼ばれる例外的な取り扱いを定めた規定)で否認して対応するのではなく、通達そのものを見直して予測可能性を確保する必要がある。2022(令和4)年の最高裁判決を巡る調査官解説も、評価額の乖離は本来、通達の見直しによって解消すべきだとしていた。これが今回の見直しの出発点だ。

 次ページでは、現行方式の「利益が出ていない会社は相続税評価も低い」という前提が覆る新方式が、相続税評価額に与える具体的な影響を試算する。その上で非上場会社オーナーが今すぐに始めるべき「三つの対策」を指南する。