富裕層必見!資産防衛&節税術Photo:PIXTA

オーナー企業の経営者が「資産防衛」で直面する最大の壁の一つが、最高税率55%に及ぶ相続税だ。ファミリーの資産を次世代へつなぐため、多くの経営者が「早期の生前贈与」という選択肢を取る。しかし、その節税対策は、一歩間違えれば経営のかじ取りを左右する「支配権」を無防備に手放すという、致命的なリスクをはらんでいる。連載『富裕層必見!資産防衛&節税術』の第25回では、法務・ガバナンスの視点から、オーナー経営者が陥りがちな生前贈与の盲点を浮き彫りにし、不測の事態に備えた具体的な防衛策を徹底解説する。すでに生前贈与を実行した人には、今から講じられる対策を指南する。(岩崎総合法律事務所代表弁護士・シニアプライベートバンカー 岩崎隼人)

鉄板の相続税対策「生前贈与」に潜む
致命的なリスクを知っておこう

 オーナー企業の経営者が直面する最大の壁の一つが、最高税率55%に及ぶ相続税だ。ファミリーの資産を次世代へつなぐため、多くの経営者が「早期の生前贈与(以下、贈与)」という選択肢を手に取る。しかし、この節税対策は一歩間違えれば経営のかじ取りを左右する「支配権」を無防備に手放すという、致命的なリスクをはらんでいる。

「家族だから」「信頼しているから」と無防備に株式を贈与した結果、予期せぬ後継者の脱落やライフイベントによる関係性の変化などによって、紛争や事業危機の火種となるケースがあるのだ。そこで、法務・ガバナンスの視点から、オーナー経営者が陥りがちな贈与の盲点を浮き彫りにし、後悔しないためのポイントと万が一の事態に備えた具体的な防衛策について解説する。

 その前提として、まず相続税対策に生前贈与が選ばれる理由からおさらいしてみよう。

 一定の規模以上のオーナー経営者にとって、自社株の承継は経営者としての集大成ともいうべきものである。そこで重要となるものの一つに、相続税負担の軽減がある。

 日本の相続税は最高税率が55%に達し、これが数世代にわたって繰り返されれば、その資産規模は劇的に目減りしていく。さらに深刻なのは、多額の税負担に伴う“副作用”だ。納税資金をつくるために株式を第三者へ売却したり、自社株買い(金庫株)のために多額の内部留保を取り崩したりすれば、ファミリーの資産だけでなく、会社の財務基盤や経営の支配権までもが損なわれてしまう。

 経営者が「上場前に子ども名義の資産管理会社を設立し、そこに株式を集約する」「株価が低いうちに生前贈与を済ませておく」といった節税手法を選択するのは、ある意味で当然である。

 ただし、生前贈与を行った結果、取り返しのつかない紛争を呼び込むことがある。次ページで、その「四つの落とし穴」と、具体的な対策を詳しく解説する。