退職金改革で転職は増える?
若手のキャリアも変わる

 では、このような新制度が伝統的日本企業に広まった場合、転職市場はさらに流動化するのでしょうか?

 このようなルール変更でも、大企業全体の3分の1を占める「生涯ひとつの会社だけに勤務する層」が流動化することはおそらくないでしょう。

 というのも、この層はそもそもリスクを取らない層です。その層の中で活躍している人たちは、これまで以上に評価されますから会社を変わる必要はありません。標準的に昇進している人たちもこれまでと退職金レベルが変わらなければ同様でしょう。

 唯一、この制度変更で被害を被るあまり会社に貢献していないと評価されている人たちも、安定した職を失うリスクはとれません。制度変更による減額を受け入れるしかないでしょう。

 一方で若手社員の再転職は、より流動化するかもしれません。

 たとえ何社かを渡り歩くことになったとしても、それがデメリットになりにくい新制度の下では、数年の間、活躍を続けたらその実績を武器につぎの会社に転職するというアメリカ的なキャリアアップがやりやすくなるからです。

 最後に、このような制度が広まることで有望な人材の流出元になるのは、ひょっとすると若手官僚の世界かもしれませんね。

 長く勤めあげなければむくわれない官僚の世界から、勤続年数にかかわらず評価される民間の世界が広がれば、一方通行でそちらへの流動が増えることは十分に考えられそうです。

 三井住友信託銀行による今回の見直しは、日本的人事制度の変化を加速させ、社会を意外と大きく変えていくのかもしれないのです。

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