言うべきときに、言うべきことをきちんと伝える
その共通点とは、「普段は穏やかでも、いざというときには厳しさを見せる」ことです。
普段から怒ってばかりいる人が怒っても、「またか」と受け流されてしまいます。ところが、いつも穏やかな人が本気で怒れば、部下は「これはただ事ではない」と感じる。その本気度や事態の重さが伝わるのです。こうしたメリハリが、リーダーへの信頼につながります。
「怒る」と「叱る」は違うと言われますが、私はその言葉の区別自体にあまりこだわりません。仕事上の難しい局面では、「いま怒っているのか、叱っているのか」と頭で計算している余裕などないからです。大切なのは、言葉の定義ではなく、相手や仕事に対してどれだけ「本気」で向き合っているかです。
松下幸之助さんには、部長の重大な失敗に烈火のごとく怒り、相手が目の前で気絶したという逸話があります。もちろん、今の時代にそのような叱り方を肯定するという話ではありません。大切なのは、言うべきときに、言うべきことを真剣にきちんと伝えられるかどうかです。
リーダーは、求められる役割に応じて振る舞うことも必要です。
以前、元サッカー日本代表コーチで、アテネ五輪日本代表監督も務めた山本昌邦さんと対談した際、「サッカーの監督には三つの『者(しゃ)』が必要だ」と教えてもらいました。
選手の状態を見極める「医者」、試合の流れを読む「易者」、そして選手が力を発揮できるよう、求められる監督像を演じる「役者」です。企業のリーダーも同じでしょう。組織や部下が力を発揮するために、自分がどう接するべきかを考える。どういうリーダーであれば、部下は接しやすいのか、考えが伝わりやすいのかを考え、時にそれを演じるわけです。
状況に応じて受け止め、時には厳しく伝える。すべて自分の感情のままにやればいいというのではありません。そうした「あるべきリーダー像」を演じ続けるうちに、その理想の振る舞いは少しずつ自分自身のものになっていきます。
感情をコントロールし、怒りに任せて行動しないことはもちろん大切です。ただ、感情を抑えることと、情熱まで小さくすることは違います。
私の師である禅僧・藤本幸邦先生は、生前にこう教えてくださいました。
「欲はエンジンであり、理性はハンドルとブレーキだ」
欲がなければ、人は前へ進めません。「こうしたい」「もっと良くしたい」という欲が、行動のエネルギーになる。一方で、それを野放しにすれば暴走する。理性によって制御する必要があるのです。
では、どのような欲を持つべきなのでしょうか。







