北京は日本の何を「不合格」とみなすかを語る一方、何をどこまで改めれば「合格」と認めるのかは、はっきり示していない。

 北京は首脳会談に応じても、日本が「合格」したとは認めないかもしれない。そして、その判断は年末に予定される日本の安保3文書改定にも関わってくる。

「撤回」が消えても
中国の要求は変わらないのか

 発端は2025年11月7日、高市首相が国会で、中国による台湾への武力行使が日本の「存立危機事態」に当たり得ると答弁したことだ。北京はこれに強く反発し、発言の撤回を繰り返し要求してきた。2026年5月7日の中国外交部記者会見でも、撤回を明確に求めていた。

 ところが8月27日、中国共産党中央対外連絡部の陸慷副部長と日本の議員団との会談を伝える中国側の公式発表には、「撤回」という言葉がなかった。代わりに、日中間の「四つの政治文書」を守り、「実際の行動」で関係改善の条件をつくるよう求めた。

 筆者は前回の記事で、この公式文言の変化に注目し、日中首脳会談への道が残されている可能性を指摘した。

 ただし、公式発表から「撤回」が消えたからといって、中国側が要求を緩めたわけではない。

 10月8日の共同通信によれば、王毅氏は9月28日の岩屋氏との会談で、依然として高市首相の答弁の「撤回もしくは訂正」を求めていた。また、時事通信によれば、岩屋氏は1972年の日中共同声明を両政府で再確認し、それを事実上の撤回とする案を示したが、王毅氏は否定的な反応を示したという。

図表:日中関係_時系列
画像:Diamond ※AIで作成 拡大画像表示

 それでは、公式発表から「撤回」が消えたことに意味はないのだろうか。

 筆者はそうは考えない。公式発表は、北京が国内外に向けて残す外交上の記録である。そこで撤回を強調し続ければ、撤回のないまま首脳会談に応じる際、北京側にも説明が必要となる。

 会談の場では撤回・訂正を求めつつ、公式発表では「是正」や「実際の行動」にとどめることには、要求を維持しながら外交上の選択肢を残す効果がある。

 つまり、北京にとって、首脳会談に応じることと、日本への要求を緩めることは、必ずしも一体ではない。

 もう一つ重要な問題がある。「撤回」は履行したかどうかを確認しやすい。一方、「是正」や「実際の行動」は、何をすれば十分なのだろうか。