鍵となったのは、会談3日前の11月7日に成立した四項目の合意だ。
中国は尖閣諸島の領土問題の存在を認めさせたい。日本は「解決すべき領有権の問題は存在しない」という立場を変えない。そこで両国は、東シナ海で生じていた緊張について「異なる見解」を有すると確認し、危機管理と対話再開で一致した。
つまり、領土問題そのものを解決しないまま、首脳会談を実現したのである。
もっとも、2026年の状況は異なる。高市首相の答弁は、将来の台湾有事における日本の軍事的対応に関わる。日米同盟や国内法にも関係する問題を、外交文書の工夫だけで処理するのは容易ではない。
実際、岩屋氏による共同声明の再確認案に王毅氏は否定的な反応を示したと報じられている。
2014年のように
首脳間の対話を再開するのか
ただし、岩屋案と2014年の合意には違いがある。岩屋案は共同声明の再確認を「事実上の撤回」と位置づけ、答弁をめぐる対立を収めようとするものだった。一方、2014年の合意は、対立を決着させず、危機管理と対話再開を先に進めるものだった。
今回も、答弁をめぐる対立を残したまま、首脳間の対話を再開する選択肢は考えられる。
では、北京にそうする動機があるのか。
その判断を左右する要因の一つが、米中関係である。
9月の米中首脳会談後、両国は「尊重、公平、対等」に基づく関係の構築や、APECとG20の相互支援で一致した。根本的な対立は解消していないが、北京にとって米国と対等な立場で協議を続けられることには外交的な意義がある。
米中関係を当面管理できるのであれば、北京が日本との関係改善を急ぐ必要性は相対的に下がる。日本に求めた条件を、簡単に引き下げる理由も乏しい。
高市首相との会談に
応じる動機は
一方、北京には別の外交需要がある。
王毅氏は10月23日、「全球治理倡議」を具体化する八項目の行動の第一に、今年のAPEC首脳会議を成功させることを挙げた。中国は主催国として、APECを通じてアジア太平洋での外交的な存在感を示そうとしている。
北京には高市首相との会談に応じる動機もある。会談の実現自体が外交上の成果となり得るからだ。







