

元マイクロソフト日本法人の会長で、現在は慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の古川享さんをホストに迎えて、古川さんが日本を変えていく存在と期待を寄せるスマート・ウーマンの方たちとの対談を掲載しています。閑歳孝子さんは、記者職からWeb業界へ転身され、アクセス解析ツールのUserInsightやオンライン家計簿ツールのZaimなど数多くのサービスを開発してきました。受け入れられるサービスには使い手への「愛」が大切だと言う閑歳さんに、ものづくりへのこだわりを語っていただきました。
古川享(以下・古川):閑歳さんはウェブ制作からプログラミングに行き、アクセス解析ツールを開発したり、現在はクラウド家計簿「Zaim」を提供しています。お客さまへの愛情、そして、自己愛が必要ではないか、愛が一番重要だと言っているのを読みました。その言葉は僕自身がキーワードにしてきたことで、大学院の授業では、“integrity”「真摯さ」なんてもったいぶった言葉を使ってますが、要は「愛」ってことです。そんなこともあって、その発言を見たときにとても気になりました。
閑歳孝子(以下・閑歳):愛が重要だと思っています。「神は細部に宿る」というように、きっと誰かわかってくれるんじゃないかと。今自分がやっている細かいことは、ほとんどの人に通じないかもしれませんが、わかる人がひとりはいるはず。今はお金のサービスでここまでユーザーの細かい使い勝手を考えているのは私しかいないという自信があります。それがどこかで伝わればいい。そういう言葉がユーザーからちょっとでも漏れ聞こえたらもう十分なんです。事業を継続するにはお金を稼がないといけませんが、本当に大事にしたいのはその部分です。
古川:ギークな人がつくるのは、「こんなすごいものをつくったんだ。どうだ」という感じになりがちで、「すごいね」という感じはありますが、そんな機能を誰が使うの、となります。閑歳さんはお客様が何を欲しているのかをとことん追求している。技術で何かを提供するのではなく、困っている何かを助けてあげるには、これがあったら便利ではないかということがものをつくる原点、原動力になっているのはすごいと思います。