運転資金を理解して、資金繰りを好転させよう

 運転資金という言葉は、読者の皆さんも時おり耳にしたり、あるいは自分でも使ったりすることがあるかもしれません。ところがその中身については、意外と人によってバラバラだったりします。実際に明確な定義が存在するわけでもないので、相手が何度も使っていて、どこまで含めているのかわからない場合には、「運転資金にはどこまで含めているんですか?」と聞いてしまってもよいでしょう。
 英語で運転資金は、Working capitalと言います。会社を運転(=Working)するための資金(=Capital)なので、日本語そのままです。Working capitalは狭義では、以下で計算されます。

Working capital =
Accounts receivable + Inventory – Accounts payable

 

 顧客に製品を販売した後の入金待ちに相当するAccounts receivableと、販売のために保有しておくInventoryは、製造業として不可欠な資産です。一方で、Accounts receivableは「現金をまだ回収できていない」、Inventoryは「現金を使って、作ってしまった」ということで、ともに資金繰り上はネガティブな要素です。これら2つが大きいほど、資金繰りはひっ迫していきます。
 それに対して、Accounts payableは、「原材料等を仕入れたものの、まだお金は払っていない」という、資金繰り上はポジティブなものです。よって、Accounts payableが大きいほど、資金繰りは改善します。
 左に資金繰り上ネガティブな要素が2つ、右に資金繰り上ポジティブな要素が1つなので、トータルで見れば、どうしても右側に資金ギャップが生まれます。この資金ギャップのことを、Working capitalと呼ぶのです。
 Working capitalが存在するのは決して悪い話ではありません。製品が売れているからAccounts receivableがある、製品が売れているからInventoryを用意してあるのです。十分なお金を保有している企業であれば、自社のお金をWorking capitalに充てればよいですし、お金のない会社は、銀行に対して「Working capitalのための資金を貸してください」と言えばよいのです。ただし、Accounts receivableの多くが、不良債権(Uncollectible receivables)や不良在庫(Dead stock)となれば、話は別です。銀行もそう簡単には融資してくれはしないでしょう。
 Accounts receivable、Inventory、Accounts payableがメーカーの3大Working capitalですが、それ以外にも本書100の勘定科目にある流動資産(Accrued revenue、Prepaid expenses)や流動負債(Prepaid income、Accrued expenses)も大切なWorking capitalです。
広義では、

Working capital = Current assets – Current liabilities*

と考えてもよいでしょう。
*運転資金ニーズですでに借りている短期借入金は除く

 Working capitalをDaily sales(1日当たり売上高)で割った日数を、Cash conversion cycle(CCC:キャッシュ・コンバージョン・サイクル)と呼びます。一緒に覚えてしまいましょう。CCCの短い会社は、Accounts receivablesの早期回収、Inventoryの圧縮、Accounts payableの支払長期化を意味するため、資金繰り上は有効です。

Cash Conversion Cycle (Days) =
Working capital / (Sales/365)


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