「その服、中国製です」→1秒で見破るすごい方法とは?
「経済とは、土地と資源の奪い合いである」
ロシアによるウクライナ侵攻、台湾有事、そしてトランプ大統領再選。激動する世界情勢を生き抜くヒントは「地理」にあります。地理とは、地形や気候といった自然環境を学ぶだけの学問ではありません。農業や工業、貿易、流通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問なのです。
本連載は、「地理」というレンズを通して、世界の「今」と「未来」を解説するものです。経済ニュースや国際情勢の理解が深まり、現代社会を読み解く基礎教養も身につきます。著者は代々木ゼミナールの地理講師の宮路秀作氏。「東大地理」「共通テスト地理探究」など、代ゼミで開講されるすべての地理講座を担当する「代ゼミの地理の顔」。近刊『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』の著者でもある。

中国の経済戦略を解説!
先進国の輸出統計にはある特徴があります。「1位機械類、2位自動車」となっている国が多いのです。
貿易額の多い上位30カ国のうち、このような統計となっているのは中国、アメリカ合衆国、ドイツ、日本、フランス、韓国、メキシコ、ポーランド、トルコ、タイ、チェコと11カ国もあります(2023年)。
本項では、中国の経済戦略を解説します。
中国は「1位機械類、2位自動車、3位衣類」です。衣類というのは、イタリアが輸出するようなブランド品(イタリアの輸出4位は衣類)ではありません。比較的安価で手に入る衣類です。衣類というのは、いわゆる労働集約型産業の1つで、多くの労働力を必要とします。そのため、安価な賃金水準を求める傾向にあります。「安価な労働力」指向型産業ですね。
さらに中国は、綿花の生産が世界最大ですので、原材料の現地調達が可能です。
「人がいる! 原材料(綿花)がある!」
これが、中国の綿糸や綿織物の生産量が世界最大である背景です。
さらに、世界的な生産拠点となっていることから、国内で生産する綿花だけでは追いつかず、世界最大の綿花生産国であるにもかかわらず、世界最大の綿花輸入国となっているのです。世界の綿花輸入量のうち、中国の輸入量は21.3%を占めています。
自分が着ている服のタグを見てみましたが、「made in PRC」と書かれていました。PRCとは、People's Republic of Chinaの略です。最近は「made in China」と書かないこともあるようです。
(本原稿は『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』を一部抜粋・編集したものです)