「ネットとリアルの分断」は企業の都合?
宅配30分を目指すAmazonの顧客主義

 最近、小売業界では「オムニチャネル」という概念が注目を集めています。これは、リアル店舗やネット店舗、メール、ソーシャルメディアといった様々な顧客接点を統合して、どのチャネルからでも顧客が購買できるようにするものです。「オムニチャネル」というくらいですから、チャネル戦略と思われがちですが、本当は顧客戦略、顧客主義の接点づくりなのです。また、オンラインとオフラインの顧客データベースの統合と思われがちですが、そうした受け止め方だけをすると、結果は顧客主義とは異なる方向に行く恐れもあります。

 オムニチャネル戦略の原点は、徹底した顧客視点です。企業側論理から「ネットで買ってくれ」「このお店で集客しよう」とネットとリアルを分断して考えるのではなく、顧客行動から考え「Aという顧客はBの時間帯に、Cというロケーションにいて、Dのように行動するだろう」と考えてみると答えは自然に見えてきます。

「オムニチャネル」という言葉を最初に使ったのは、アメリカの大手百貨店のメーシーズです。同社は、それ以来、オムニチャネル戦略をひたすらと言っていいほど実践しています。顧客ニーズを取りこぼさないように、在庫や顧客情報の一元化はもとより、店舗と自社ネット店舗の区別をなくすような様々な努力をしています。

 例えば、アメリカで多数展開しているチェーンデパートのブルーミングデールズの実店舗では、顧客が洋服を脱がなくても、顧客の身体を一瞬にして採寸する3Dボディスキャナーという機械を導入し、計測されたサイズデータから、顧客のサイズにぴったりのジーンズのブランドやスタイル、サイズを割り出し、顧客に推薦リストとして渡すことをしています。顧客は、推薦リストを手にデパート内の各店で買物ができます。

 また、その際、デパートですぐに購入しなくても、後日、このデパートのオンラインショッピングサイト(ECサイト)で、測定した時の情報に記載されている各顧客のIDを入力すると、自身にピッタリのサイズのジーンズを教えてくれ、試着無しでも安心して購入できます。ECサイトでの洋服の購入は、試着できないことがネックになっていましたが、実店舗で測定したデータを、ECサイトで活用できることで、販売機会を逃さない、実店舗ならではの施策です。

 Amazonも顧客視点のデリバリー革命を行っている注目の企業です。その1つが、米セブン-イレブンにもある宅配ボックスでの商品の受け取りシステムでしょう。これは、荷物の受け取り先が増えるというAmazonの利便性が上がるだけでなく、コンビニで荷物を受け取る際に、顧客はセブン-イレブンでついでに何かを買う機会が創出される可能性が生まれ、両社にとってWin-Winの取り組みです。