中国には小規模な炭鉱開発が無数にあるが、その多くが民営企業だ。「おらが村から石炭が出た」「トラックからこぼれた石炭を拾い集めた」――そんなところから財を築いた人物もいる。それこそ炭鉱業界は、裸一貫からの成功者を輩出した“夢の産業”でもあった。

 しかし、これら民営企業にはカネがなかった。中国四大銀行をはじめとする大手金融は、リスクある民営企業への融資を嫌がったため、民営企業は常に慢性的な資金不足に晒されていた。

 それを埋めたのが民間の資金である。高利回りをうたって社会全体に積み上がるタンス預金を引き出させ、それを資金難に喘ぐ民営企業に注ぎ込む、そのつなぎ目となったのが、いわゆる「影の銀行」と分類される信託業界だった。2008年以降、信託業界では石炭など資源がらみの融資案件が急増する。

償還不能となった信託商品が続々
時代の寵児も“金融地雷”扱いに

 しかし、この石炭産業の急拡大は長くは続かなかった。国外からの石炭輸入の増加も災いした。2008年は4040万トンだったのが翌年には倍以上に跳ね上がり、2012年には2億8900万トンを輸入するようになる。中国国内の過剰な設備投資とともに石炭はだぶつき、2013年以降、その価格は著しく下落した。盲目的な生産規模拡大とその末路に、中国の専門家らも警鐘を鳴らしていた。

 飛ぶ鳥を落とす勢いで発展した石炭産業だが、中国では「黄金期は2012年に終焉した」というのが定説だ。そして、この年以降、償還不能となった信託商品が続々と出現するのである。

 筆者が2012年に面会した“石炭社長”も、間違いなくこの業界からの逃避を模索していた1人だった。かつての時代の寵児も、今では世間からは“金融地雷”のレッテルを貼られてしまっている。