いまでこそ「介護」という語はポピュラーになったが、筆者が寝たきりの親を抱えていた頃は、毎日が戦争状態であった。介護保険料を支払っていても、それによって制度の何を利用できるのかを、筆者は長い間、知らなかった。

 家族がみな疲れ果てているところで、ようやく要介護認定を申請したところ、いきなり「5」という認定を受けたときの衝撃を、筆者はいまでも忘れない。何事によらず、制度の仕組みを知らないと、苦労するものである。

 介護がどれだけ大変かは、経験した者でなければわからない。だから、介護ビジネスを手がける企業については、たとえそれが営利を目的とするものであっても、その存在には感謝しなければならない。

 介護ビジネスの最大手といえば、ニチイ学館になるのだろう。今回は、準大手であるワタミのほうをメインにを取り上げる。

 ワタミがブラック企業であるかどうかは、本コラムが関知する事由ではない。同社の決算データを客観的に解析し、淡々とした評価を述べていく。

 ポイントは、相乗効果(シナジー効果)の検証にある。例えばセブン&アイHDが、シェールガスの掘削事業を始めても、相乗効果は生まれない。また、新日鉄住金がコンビニエンス・ストアを始めても、相乗効果は生まれない。

 ニチイ学館であれば、医療関連事業とヘルスケア事業(2013年からは「介護」を分離)」とが相乗効果を生み出している。ワタミの場合、国内外食事業に介護事業を組み合わせることによって、宅食事業という新たな相乗効果を生み出している。

 ニチイ学館もワタミも介護ビジネスが扇の要となって、他のセグメントに相乗効果をもたらしているということだ。

相乗効果の
プラス面とマイナス面

 業績がよいとき、相乗効果は想定以上の成果をもたらす。厄介なのは、業績が下降気味になったときだ。セグメント同士で足を引っ張り合うのも、相乗効果の副作用だ。