業務のマニュアル化やシステム化にも取り組もう。「社長に聞かないと分からない」「責任が誰にあるのか分からない」といった会社は売れない。売却に向け、業務のありようが誰の目にも分かるようにしておく必要がある。

 売れる会社作りには黒字を出して税金を払ったり、プロに頼んだり、従業員と話し合ったりで、コストも時間もかかる。その手間は株式公開の準備と似ている。

 M&Aが成功しても、すぐに身を引けるとも限らない。円滑な譲渡のため、しばらくは社業の引き継ぎを求められ、売却額も分割で支払われることが多い。

 経営者にとって会社は大事に育てた子供のようなもの。売るために育てた肉牛や競走馬とは違う。だが、売ると決めたなら売れる会社にするため、すぐに会社を“きれい”にしよう。

タイプ5 廃業―事業継続が困難な場合

 後継者がいない場合、あるいは、それ以外の問題で事業の継続が困難な場合、残るのは、会社をたたむという選択肢だ。この道を選ぶ中小企業が多いのは残念なことだが、廃業を決めても、債務を含む財産の整理、従業員の解雇、顧客への手当てなど課題は多い。

 事業が黒字であるにもかかわらず廃業に踏み切る際には、廃業予定の数年前から保険などに加入して、課税の繰り延べによる節税を図る手がある。

 保険商品のなかには、支払保険料が全額損金算入(税務上の経費計上)できるものがある。その保険に加入すれば、保険料を支払った年度の税金がその分安くなる。これは課税の繰り延べなので、その後、その保険を解約すると、解約した年度に解約返戻金を計上しなければならない(そこで初めて税金が課税される)。ただし、廃業に伴って必要になる費用(退職金など)を、この保険の解約返戻金で相殺できれば、結果として税金を支払わなくて済むこともある。