こうした中、家電AV分野の主要企業は脱コンシューマ型事業中心へと転身していく見通しだ。パナソニックは自動車と住宅分野に注力すると宣言しており、自社ブランドでコンシュ―マ型事業を拡大してきた歴史と決別する。白物家電も今後は内装(事前据え付け型)型へ転換しよう。ソニーも現在構造改革中だが、PCブランドVAIO売却に象徴されるように脱コンシューマ事業の方向である。現在ソニーがエレクトロニクス分野でも競争優位を維持しているのはCMOSイメージャー(固定撮像素子の一種)や業務用放送機器などB2B型事業だ。大きな方向性はブランドビジネスと袂を分かつということだ。

 一方、ブランドビジネスが残る分野もある。時計だ。AV機器等と異なりブランド数が増加し続け、単価も上がり続ける唯一の産業である。業界平均の利益率も二桁を超えている(図2)。この分野は日本企業もスイス企業をフォローする形で安定成長を続けている。ブランド価値の創造が唯一有効な分野だ。アイウォッチの参入が予想されており、有力家電企業は時計をもスマート化しようとしている事実もある。しかし、年間10億個を超える時計市場でスマート化の影響を受ける分野は限定的であろう。

出所:会社、BofAメリルリンチ・グローバルリサーチ予想

グローバル比較:
事業領域の絞り込みが焦点

 家電AV業界のグローバル競争は複雑化しており、単純に構造を表現することはできない。ただ敢えて言えば、スマートフォン2強のアップルやサムスン電子がコンシューマ系の商品で20%を超える売上高営業利益率を出し、全社でも二桁の利益率を達成しているのに対して、日本企業は1社も二桁利益率に到達していない。企業は規模ではなく中身だ。高収益を確保できる事業にのみフォーカスする企業が日本では少なすぎる。事業領域の絞り込みができていないことがグローバル比較で見劣りする点だ。

 個々の事業では有望な事業もある。例えばソニーのCMOSイメージャーはハイエンド領域でダントツの世界トップだ。パナソニックの電気自動車用電池も秀逸。シャープをはじめ液晶2強の高精細中小型液晶パネルも日本勢が50%以上のシェアを持つ。高付加価値白物家電及びそのデバイス、時計のムーブメントなども含めて国内工場を有するこれら事業領域は円安も手伝い、日本企業の収益性は大きく改善し始めている。引き続きコアになるデバイスで力を保持し、それを自社以外の顧客に拡大することで収益性を上げるきっかけを掴みつつある。