身体からまきおこるような表現には練習がいる
佐々木 小林さんやその周囲の女性はこの本のどういうところを楽しく読んでくださったんでしょう。
小林 私は、思ったことをすぐに口に出してしまうんです。「それはいけないことです」と書いてあったので、言葉を考えてから話そうとみんなで盛り上がっています。それから、食事のレポート!とても興味深かったです。
佐々木 たとえば、「本当においしい」っていうふうにしても「ほんとにほんとにおいしい」っていうふうに繰り返して言うと強調できますし。あと、赤裸々法っていうのも書かせていただいていますね。
小林 自分の身体と向き合うんですよね。
佐々木 体からまきおこることを言葉にする。たとえば、「鳥肌が立つほどおいしいです」っていうふうに言ってあげるとか。「食べたら胸がドキドキします」とか。そういう言葉は普通は口にしないでしょう。でも何かを食べたあとでもいいですし、喜んだときとか、感動したときでもいいんですけど。そのときに体に巻きおこることを、あえて言葉にする、みたいなこと。それが、強い言葉を作る技術っていうところで、紹介させていただいたんですね。
小林 実は番組のグルメリポートのときに「赤裸裸法」に挑戦したんです。「五臓六腑が喜んでおります、おいしい」とか「血流が良くなった気がします。あ!鳥のエキスが今流れています」とか(笑)。
佐々木 ありがとうございます。どうでした?
小林 手応えがあったのですが、全部カットでした!
佐々木 (笑)
小林 これから磨き上げていきたいです。
佐々木 なるほど。確かに読み終わって、じゃあそれですぐに実践できるかっていうと、読者の方には、まあ、難しいと思うんですよ。「だけど、三回使ってみてほしい」っていう話を、僕は講演でもよくさせていただいています。
赤裸々法にしても、自分の体に巻き起こってることをあえて言葉にするって、したことないから、すぐにはできないと思うんです。そんなときは、「今日三回試してみよう」と決める。ランチを食べたときに思ったことを、あえて言ってみるとか。メールで「ありがとう」って返すときに、あえて、その「ありがとう」の気持ちを赤裸々法で言ってみる、みたいなことを3回やると、だんだん自分のものになっていくんですね。
それは料理を作るのと一緒です。炒飯だってレシピを見て3回作れば、もう4回目はできてしまいますよね。それとおなじで。つまり、伝え方ってセンスじゃなくて技術なんです。まあ、もちろん学ぶ速度っていうのは人によってちがうかもしれないけれど、誰だって、レシピにしたがっていれば、こういう言葉って作れてしまうんですね。