こうして本社と営業の改革が始まったが、抵抗感や評論家的批判が多かった。どこにも存在する抵抗勢力で、多いのは、「そんなことやっても成果は出ない」「この忙しいときに、私は困っていない」「お金をかけてやるべきことではない」など。ここで私が必要だと思ったのは、業務を「目で見てわかるように」することだ。モノづくりの現場では、材料がラインを流れて製品化されていく工程を目で見ることができる。現物を見て確認できるため、マネジメントもしやすい。
ところがホワイトカラーの業務は、情報という目で見えないものを相手にしている。さらに、仕事のやり方が明文化されているわけでもなく、多くの人が自己流のやり方で仕事をしている。個々人の仕事のやり方はもちろん、情報の流れを見ることもできない。このような属人化された業務を可視化する挑戦が始まった。
本社業務の可視化で意識を変える
情報化社会と言われて久しいが、IT活用の先進企業では、人に仕事がついているのではなく、情報システムに仕事がついている状態になっていると言える。ここでは属人化している状態をどう可視化してIT活用化へ結びつけるかから述べる。
個々の「人」に仕事がついていて、周りからは見えない状態になっていることがホワイトカラーの業務改善を難しくしている最大の理由と言える。そこで、私が取り組んだのは、業務プロセスを細かな単位に分解し、その一つ一つを、記号を使ってチャートとして表現することだ。チャートに書き表わせば、情報の流れや業務プロセスが一目瞭然になり、ムダも把握しやすくなる。トヨタ生産方式の管理技術をホワイトカラーの業務管理に反映させようと考えた。
もちろん、その当時、業務プロセスをチャート化するのに便利なツールがあったわけではない。そこで日本能率協会元会長の服部明氏との出会いがあり、プロセスチャート法を学び、活用した。全部の業務を一つ一つ分析し、一生懸命、手書きでチャートを作成していくしかなかった。この作業は非常に大変だったが、確かな効果も実感することができた。